竹下内閣が消費税を導入した理由は何だったのでしょう

竹下内閣の消費税導入理由

 

西暦1988年(昭和63年)の11月10日に国会で消費税に関係する法案が承認され、消費税法が12月30日に公布(こうふ こういう法律が出来ましたと世の中に知らせることです)されました。そして翌年1989年の4月から3%の消費税を負担する仕組みが始まることになります。現在は税率が当時の2倍以上になってしまっている消費税。この消費税という仕組みを導入したのは竹下登(たけしたのぼる)というかたが首相を担当していた竹下内閣の時でした。この内閣が消費税を導入した理由は何だったのでしょう。消費税を取り入れた理由としては今後の社会の変化に対応するため国にとって安定した歳入基盤を確保したかったからといったものや、国の歳入に占める所得税と間接税の構成を変更する必要があると考えていたから、既に存在していた間接税の仕組みに限界があると考えていたからといったこと、以上のような内容が理由として挙げられる場合が多いようです。

 

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社会の変化に対応

 

消費税を導入するための目的として政権側が一番主張していたのは、今後到来する、傾向が強まることが予想される少子高齢化社会に対応するためという理由でした。御高齢の方々が増加する世の中になればそれまでと比べて医療サービスを利用する方々が増加するのは明らかで、それに伴って国が医療制度のために支払うお金は当然増加することになります。話は医療に限った話ではなく、身の回りのお世話に関する福祉サービスに関しても当然かかる費用が増加することになります。しかし1980年代後半の時点で国には相当な額の借金がありました。財政赤字だったわけです。それまでの税の制度で医療や福祉へのサービスを続けていれば税金として国に入ってくるお金よりも国が国民のために使うお金のほうが多い状態が続くことになって、財政赤字がますます膨れ上がってしまい、いずれ大変な問題になってしまうと考えられていました。財政赤字の状態を悪化させずに、そういった増加する国の出費を賄うだけの財源を今の時点から新しく確保しておく必要があるので、それを賄うために消費税を導入したいというわけです。

 

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税の構成を変えたかったから

 

国は現在と比べ、消費税が導入される以前は人々の所得に税金をかける所得税に頼るような仕組みにしていました。増税による国の増収が必要となればまずは所得税の税率を上げる。お金をいっぱい稼いでいる人には普通の所得の人よりも高い所得税率を負担してもらってたくさん税金を払ってもらう。現在も基本的にはそういう仕組みではあるものの、以前はその傾向がもっと強い状態となっていました。高齢化社会になってさらに税金を徴収するようになった場合、さらに所得税の税率を上げるというのでは、あまりに所得税の重税感、所得税の負担が多すぎるよ!という不満が強まることになる、と政府側は考えたようです。国民のそのような負担を軽減するためには所得税の負担を軽くしてその一方で間接税を増やすことによって税収を確保するという形のほうがいいだろうと判断したわけです。間接税というのは税金を負担する立場と税金を納める立場が異なっている税金のことを言います。例えば所得税は税金を負担する人と税金を納める人は同じですよね。確定申告のような光景を想像していただくとわかりやすいのかもしれません。給料の中から所得税が源泉徴収として天引きされているのは申告作業の軽減を目的としているわけですから、基本は自分の儲けを計算し税務署に申告して算出された所得税を自分で支払うというのが所得税の本来の姿です。ちょっと話がずれましたが、税金を負担する立場と税金を納める立場は所得税の場合同じです。こういう税金は直接税と呼ばれます。一方間接税は税金を負担する立場と税金を納める立場は異なります。甘い飲み物に税金をかけるという国があるそうですが、そのような税金は間接税ですね。税金を負担するのは甘い飲み物を購入する一般消費者です。しかしその一般消費者が負担した税金を税務署に納めるのは消費者から一旦甘いものにかけられた税金を受け取っている小売店のような業者さんです。このように税金を負担している立場、税金を税務署に納めている立場が異なる税金は間接税と言います。

 

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間接税の仕組みの変更

 

消費税が導入される以前にも様々な間接税が存在していました。石油税とか航空機燃料の税とか自動車関連の税等々。こういった既に存在している間接税は所得税の更なる増税を回避するために既にかなり増税されていたのだそうです。先ほども書きました通り、今後さらに税収を増やすにしても所得税を増税するのはすでに重税感が強くやりにくい、でも従来の間接税もすでに結構な税率がかかってしまっていて、それらの税率を増やすというのも無理がある。当時の政府はそのように考え、従来の間接税のような特定のものに限定するやり方ではなく、間接税の在り方を変更し、間接税として国民のあらゆる消費行動に税金をかけるようにしようと考えました。

 

今回は現在も続いている税の仕組みの一つ、消費税について、導入が始まった理由を一部取りあげました。たびたび増税するかどうかが議論になって注目されている税の仕組みですし、一部には非常に不公平な税制度だと厳しく批判する意見もあります。反対意見も強いこのような税制度がどうして導入されたのか、理由について確認したく今回このようなテーマで記事を作ってみました。所得税も税率を高くしてしまっており、更なる増税はやりにくい。かといって既に存在している間接税の税率も税率が高くなってしまっている。でも将来高齢化社会になるので税収をしっかり確保するための仕組みは作らなければならない。こういった難しい状況を説明されて財政に関係する役所(当時は大蔵省)の官僚から新たな間接税が必要ですと言われれば、やらなきゃダメだよなと時の首相は思うものなのかもしれません。竹下元首相の前任者、中曽根元首相やさらにその前の前任者大平元首相も消費税と似たような間接税の制度導入を試みたようです。消費税を導入しないとなれば所得税、特に富裕層の所得税税率を高くして税収を確保するという話になっていくのでしょう。貧しい人からも税金を取る消費税の仕組みを選ぶか、富裕層の所得税率を増やして豊かな人に相応の負担をしてもらう仕組みを選ぶのか。これは意見が一つにまとまる話ではなさそうに個人的には感じます。どちらかの仕組みに偏るようだと、いずれにしても問題が出てきてしまいそうな気がしませんでしょうか。消費税率もあまり税率を重くしない。所得税率もあまり上げない。国内の経済を成長させて税収の増加によって高齢化社会を乗り切る、そんなわけにはいかないのでしょうか。所得税の税率も上げられないというのはわかるような気がしますし、消費税の税率をガンガン上げていくというのも無理がある様な気がします。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

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