2010年に尖閣諸島で起きた衝突事故とは何なのでしょう

2010年の尖閣諸島での衝突事故

 

西暦2010年(平成22年)の尖閣諸島での衝突事故というのはこの年の9月7日に発生した日本の海上保安庁所属の巡視船と中華人民共和国の漁船が衝突したという出来事を指しています。巡視船というのは日本の主権の及ぶ海上での犯罪を取り締まるような、海上の安全を確保するために航行している船のことです。この日、巡視船が日本の領土である尖閣諸島の付近、領海内で漁をしていた中国の漁船を見つけ、領海の海域から出ていくよう指示しました。しかし漁船は海上保安庁の指示に従わず、巡視船は警告を繰り返しました。その過程で漁船は巡視船に向かってきて衝突します。衝突によって巡視船に損害が生じ、海上保安庁はこの漁船の責任者を公務執行妨害で逮捕しました。この責任者は中国人でした。責任者である船長を管轄の検察庁の部署に連行し取り調べをおこないます。日本の領海で違法な漁をおこない、巡視船に損害を加えたのは明らかなので法律に従って処罰されるのが普通なのですがこの事例ではそうなりませんでした。

スポンサーリンク

逮捕した海上保安部は18日後の9月25日に船長を釈放し、検察側がこの船長を不起訴処分、訴えないことにしています。このような特別扱い、きちんと罰せられずに釈放したという対応について日本国内で反発が強まりました。検察審査会という国民が検察側の不起訴処分が妥当だったかチェックする仕組みがあるのですが、この事例はその検察審査会で取りあげられ起訴するべきだという結論に至っています。その結果起訴されたのですが、管轄する裁判所、沖縄県那覇の地方裁判所は訴えられた対象である被告の船長に起訴状を送り届けることが出来ないことを理由に検察側の訴えを棄却、裁判として取りあげないこととしました。起訴から2か月以内に起訴状が送られなければならないものらしく、船長は既に中国に入国しているため起訴状を送ることは困難だったようです。こうして本来裁かれるはずの中国人船長が罪を問わない状況で釈放され中国に戻ることを許されたということで当時の菅政権に対する風当たりが強くなる結果となっています。漁船に乗っていた他の船員も不法な漁に従事していた疑いがあるのですが、その船員たちは最初から逮捕もされずすぐに中国に戻ることが許可されていました。

 

スポンサーリンク

日本政府に対する反発

 

当時の民主党、菅政権の対応について本来このような事例で政治が介入するべきではない司法の分野に口をだし、しかるべき処罰を受けさせるべき船長を釈放、帰国させたのではないかと野党側から追及されることになりました。また船長の逮捕について強硬に抗議してくる中華人民共和国政府の態度によって及び腰になっている、弱腰な外交をするなという批判も政府に対して向けられていたようです。

 

中華人民共和国の動き

 

尖閣諸島の領海内で違法な漁をしていたことを理由に漁船の船長が逮捕されたことについて中国政府は上でも触れた通り日本に対し強く抗議しました。中国側に言わせると尖閣諸島は中国のものでありその海域で漁をすることは違法ではなく中国側の正当な権利だというわけです。中国側はこの船長の逮捕後、中国の領土内で活動している日本企業の日本人職員を軍事管理区域に立入って撮影をしたという理由で、中国軍事施設保護法違反容疑として身柄を拘束しました。船長が釈放される9月25日以前の9月20日にこのような出来事が起きました。また日本に対し中国がレアアースと呼ばれる工業製品に利用される貴重な資源の輸出を禁止することにしました。9月22日頃にレアアース輸出禁止について中国政府が明らかにしたようです。また中国国内で反日デモが発生し中国政府がこのデモをしっかり規制、取り締まらなかったことで現地の日本企業が被害を受けたという出来事も起きています。このように中国側は船長を釈放させようと圧力をかけてきているように受け取れる動きを複数示してきていました。

 

スポンサーリンク

今回は2010年の9月に発生した尖閣諸島領海での漁船衝突について一部取りあげました。日中間の関係が悪化した話ですし、日本の主権を侵害してくる明確な動きでもありますし、この年に起きた出来事としてかなり重要な話なのではないでしょうか。それまで中国の漁船が尖閣諸島周辺で問題を起こすということはそれほどなかったのだそうです。しかしこのような衝突が起きる以前(この年の3月)に、中国では人が住んでいない中国領の島を国が所有するといった法律が定められ、その法律が中国に言わせれば自国領である尖閣諸島を国有化する中国側の法的根拠となりました。中国側の指導者が尖閣諸島の領有権について棚上げしようと判断していた頃はこのような動きもありませんでした。今回の出来事を見てみると尖閣諸島に関する中国の姿勢はそのころと比べて明らかに変化していることがわかります。今後中国側の事情で尖閣諸島に関する姿勢も強硬な方向か穏便な方向かわかりませんが変化するのかもしれません。強硬な対応をとってくる場合のことはやはり念頭に置いておかなければならないのでしょう。そして、中国国内で仕事をしている日本人の方々を拘束するという話ですが恐ろしい出来事ですね。日本側が船長を逮捕したことに対する中国側の報復ということなのだろうと私などは感じてしまいます。中国で活動している日本企業の経営者はこのような事実を十分理解しておく必要があると思いました。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

尖閣諸島の歴史について触れている話「尖閣諸島の歴史や国有化、尖閣諸島に関する中国の主張について」はこちらです。

南シナ海での中国の動きについて触れている話「スカボロー礁の場所と領有に関するフィリピンや中国の主張」はこちらです。

関連記事

ページ上部へ戻る