イランが核開発を望む理由とはどのようなものなのでしょう

イランが核開発したがる理由

 

中東のイスラム教の国の一つであるイランはアメリカやヨーロッパの複数の国々、中国との間で原子力分野の規制について合意しました。西暦2015年7月の話です。それまでアメリカを中心に様々な国々から経済制裁をされていたイランはこの時の合意によって経済制裁を緩和してもらえるようになります。イランは自国で原子力に関する研究や開発をしてきたことによって経済的な圧力を他国から加えられ、自国民の生活を結果的に苦しめることとなっていましたが、制裁されても結局は原子力分野の開発を止めるという選択をこれまでしてきませんでした。他国による経済制裁はイラン国内に相当な損害を出したと思われますが、なぜそれでも原子力分野の開発を続けようとしたのでしょう。見方は二つあります。一つはイラン側の公式な表明内容でもある原子力の平和利用がイラン社会にとって非常に有用であるからというものです。そしてもう一つはイスラエルやアメリカの一部で聞かれることの多い疑念、自前の核兵器を保有しようとしているから、というものです。ここで「核開発」という言葉について補足します。核開発には複数意味があり、今回の記事で使用している「核開発」という言葉は「原子力発電所などの原子炉を開発することによって原子力のエネルギーや原子炉の運転によって発生する物質を人々の生活に役立てること」という意味で使用しています。「核兵器を開発する」という意味で「核開発」という言葉が使われることもありますが、この記事の題にある「核開発」はそのような意味で使用しているわけではありません。

 

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イラン側の主張

 

イラン政府は他国から自国の原子力開発について批判されるたびにあくまで平和利用のために研究開発をしていると主張しています。平和利用とはつまり原子力を利用して様々な国がおこなっているように、発電する設備を整え国内の電力供給をより確実なものとすることや、原子力発電をするにあたって燃料として利用できる一部のウランやプルトニウムなどを自前で作ることが出来るよう国内の技術を発展させること、医療用の放射線同位体など電力分野に限らず、原子炉内で起こす核分裂反応によって発生する物質を他の分野に応用することでイラン国民の暮らしに役立てること、などといったものです。こういった原子力によってもたらされる恩恵を出来るだけ自力で確保したいからイランは核開発をしているのであり、これはどの主権国家にも認められるべき権利だというわけです。地球温暖化が進んでいると言われ、その原因として大気中の二酸化炭素濃度が上昇していることが関連しているという指摘もありますが、イラン国内に大量に存在し採掘されている石油や天然ガスといった資源は燃焼によって二酸化炭素を発生させてしまいます。イランとしても出来れば電力生産による二酸化炭素の排出量を減らしたく、そのような理由でもイランにとって原子力エネルギーは有用だと主張しているようです。

 

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イランの核開発に反対している国の主張

 

その一方でイラン側の主張を疑い、イランは核兵器開発のために原子力の開発をしているのだと主張している国もあります。イスラエルやアメリカの一部でそのような主張がされることが多いのですが、特にイスラエルは自国の安全保障に密接にかかわると考えていることもあってイランの原子力開発に強硬に反対しているようです。全く根拠もなしにイランが核兵器を開発しようとしていると訴えているわけでは必ずしもないようで、過去イランは国際機関の査察を避けるように秘密裏に原子力開発をしていた時期がありました。本来は核兵器不拡散のための条約に従って核兵器製造していないかどうかしっかり監視する国際機関の査察を受けながら原子力開発をしなければならないのですが、イランは一時期、そういった査察を受けずに研究開発をしていたのです。後ろめたいこと(核兵器の製造)をしていないのであれば公明正大に査察を受け原子力開発をしたらいいはずなのにそうしなかった。査察を受けずに原子力開発をしていたのは核兵器製造の意図があったからだ。一部の国々はそう疑っているようです。対立する二つの立場でイランが核開発にこだわる理由が分かれてしまうわけですが、イランが核開発する本当の理由はこの二つの理由の内どちらか一方、あるいは両方ということになるものと思われます。

 

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今回はイランが核開発をしたがる理由について取りあげました。先日アメリカが2015年に成立した核合意から離脱すると表明したことが大変大きなニュースとなっていたのを受けて、関連した話を取りあげてみようと思いこのような記事を作っています。イランが秘密裏に原子力開発をしていた時期があったというのは上でも触れましたが、昨今のイランは2015年の合意が成立したこともありIAEAのような国際機関の査察も普通に受け入れ、そのもとで原子力開発をしているようです。そのような状態であってもイスラエルなどの国はイランの核開発に対し従来と同様強く批判しています。イランの本音が平和利用にあるのか核兵器開発にあるのか、あるいは両方なのか、動機を絞りきることは私などに出来るはずもありませんが、原子力の技術を利用して人々の暮らしに役立てる権利がどの国にも認められるべきだという意見については、原子力を利用し恩恵を受けている日本人の一人として否定することは出来ません。平和利用するためにもイランの国際機関査察受け入れは非常に重要でしょうし、イランが査察を拒否するなどというような不穏な話が今後起こらないでほしいものです。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

イランが関連してくる話に触れている記事「イランとイスラエルが対立する理由は一体何なのでしょう」はこちらです。

中東の情勢に関連している他の話「ロシアはどのような理由でシリアを支援しているのでしょう」はこちらです。

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