「衣食足りて栄辱を知る」とは?読みや意味、由来について

「衣食足りて栄辱を知る」の読み方

 

故事成語「衣食足りて栄辱を知る」は「いしょくたりてえいじょくをしる」と読みます。栄辱(えいじょく)という言葉は今回の故事成語を知るまで聞いたことが無かったような気がします。普通の音読みをあてはめるだけで読める言葉ではありますが。光とか屈といった言葉で見慣れている字です。

 

「衣食足りて栄辱を知る」の意味

 

「衣食足りて栄辱を知る」は「経済的に生活で困らない状態になると道を踏み外さず礼儀をわきまえるようになる」という意味です。文字通りの意味としては「人は着るものやや食べるものに事欠かない状態とになると名誉や恥について目を向けるようになる」といことになりますので、あまり大きな意味の違いは無いようですね。

 

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「衣食足りて栄辱を知る」の類義語

 

「衣食足りて栄辱を知る」の類語は多数あるようですが、その中にはこちらの方が有名と思われる「衣食足りて礼節を知る」や古典の「孟子 もうし」の中にある「恒産無くして恒心無し こうさんなくしてこうしんなし」、中国の古典「潜夫論 せんぷろん」の中にある「礼儀は富足に生ず れいぎはふそくにしょうず」といったものがあります。類語ですから同じような意味であるに決まっていますが、以下は念のための補足です。「恒産無くして恒心無し」という言葉は「ある程度の資産、安定した生業が無ければ、安定した正しい倫理観を維持することは難しい」という意味になります。そして「礼儀は富足に生ず」は「生活が豊かになれば、人は礼儀を尊重するようになる」という意味になります。

 

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「衣食足りて栄辱を知る」の由来

 

この故事成語は中国の古典、「管子 かんし」という書物に掲載されている発言を由来として出来たもののようです。管子というのは複数の人物の記した内容が集められた書物のようです。記した人物の思想も様々です。一方で斉という国の政治家だった管仲(かんちゅう)という人の著作だとする意見もあるようです。今回の故事成語と関連している箇所の書き下し文を私なりの言葉で現在の表現にしたものを以下に記します。誤った所があるかと思いますがご了承ください。

 

一般的に領地を所有しその領地の中で生活している人々を治める立場の人物は、一年を通して領地経営を行うべきであり、人々が必要とする日々の食料を守るべきである。率いている国が豊かであれば、たとえ遠方からでも豊かな土地で生活したく人々が集まってくるでしょう。そして国の土地が切り開かれると人々はその地に留まるものです。食料を保管する蔵が食べ物で一杯な状態となれば人々は礼儀をわきまえるようになり、衣類や食料に事欠かない状態となって人々は名誉や恥を気にするようになるのです。

 

以上のような内容が管子に掲載されています。

 

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今回は「衣食足りて栄辱を知る」を取りあげてみました。衣食足りて礼節を知るという言い回しはこれまでの人生で聞いたことはありましたが、「~栄辱を知る」の方は耳にしたことがありませんでした。このような考えを説いた人が何故そう考えるのか具体的な理由がわかるのかなと少し期待して調べていたのですが、関連個所の文章にはそういうものですよということが述べられていただけでした。その前段に国が豊かなら人が集まるとか土地が開けていれば人はとどまるといったことは書いてありましたが。ただ常識的に食うや食わずの人は見栄や世間体になんてこだわっていられないだろうな、ということは何となく想像出来るような気もします。命をつなぐ方が大切だと多くの人が考えるのは無理もないことなのでしょう。一般の人たちはそういうものだと話す一方、孟子さんは、士は、つまり立派な人は経済的に行き詰っていたとしても礼儀や道徳を見失うことは無いというようなことを言っているようです。実際にそのような苦境に立った時、筋を曲げず正しくあり続けるということはどれくらい大変かということは生活が大変でない時に想像することはすごく難しいことかもしれません。第二次世界大戦後日本では生活していくことが大変で法的に問題があったとしても皆闇市で生活にどうしても必要な物資を手に入れていたそうです。しかし当時のような状況であっても、法的に問題のあることは出来ないという信念を貫いて必需品を手に入れることが出来ず、結果的に命を落とした裁判官の方がいたという話を以前聞いたことがあったように思います。立派な人物の生き方というのはそれくらい壮絶なものなのですね。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

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