プライマリーバランスの黒字化が必要と言われるのはなぜ?
なぜプライマリーバランスの黒字化が必要と言われるのでしょう
日常のテレビや新聞などで報道されるニュースの中で扱われることの多い項目や国の経済に関する話題について関心を持たれてこのページに来られた皆様、こんにちは!この記事ではニュース番組でも使われることのある用語である「プライマリーバランス」を黒字化する必要があると複数の分野などで主張されてきたのはなぜなのかについて自分なりに書いてみたいと思います。この用語の意味をご存じの方には恐縮ですが、あらかじめこの言葉の説明をさせていただきます。プライマリーバランスという言葉も日本語のように使われているのかもしれませんが、漢字で表現した呼称もあり、「基礎的財政収支 きそてきざいせいしゅうし」と言われてもいます。こちらの用語のほうがしっくりくる方もおられるかもしれません。このプライマリーバランス、基礎的財政収支というのは国、あるいは地方自治体の条件が付けられた収支、収入と支出を意味しています。国の収入は歳入、支出は歳出ですがこの歳入、歳出というのはプライマリーバランスを意味する収入、支出と同じではありません。プライマリーバランスで言う収入は歳入の中から借金によって調達したお金を差し引いたお金のことを意味しており、プライマリーバランスで言う支出というのは歳出の中から過去に借りたお金の元本や利子の支払いを差し引いたお金のことを意味しています。国債、国の借金に関わる要素を取り除いた国の収入、支出ということになります。現在の日本では国債によって調達したお金を差し引いた収入と国債の元本返済や利子の支払い額を差し引いた支出を比較すると、支出の方が上回っている状態、赤字の状態となっています。プライマリーバランスが赤字、ということです。国債を発行してお金を調達しないと税収だけでは予算に必要なお金をまかなえないわけです。そして歳入から国債を発行して借り入れた金を除いた額が歳出から国債の元本、利子の支払い金を差し引いた額を上回る場合、プライマリーバランスが黒字の状態となります。日本政府は将来のいつまでにこのプライマリーバランスを黒字化させる、などといった期限を設定する経済目標をこれまで掲げてきました。また政府とは異なる立場の分野からも黒字化を求める意見が出されてきたようです(例えば経団連などの経済団体です)。どうしてプライマリーバランスを黒字化させる必要があるという意見が強まり、実際に国の政策となってきているのでしょう。日本の財政状況に対する信頼性を維持する必要があるからとか将来の日本の世代に、より大きな経済的負担を背負わせてしまうことを避けるためといった理由が説明されてきているようです。
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プライマリーバランスが赤字
プライマリーバランスが赤字ということは政府がおこなっている政策、社会福祉政策や防衛、公共事業などなどをまかなうお金は税収だけでは足りず国債を発行してそれを個人や法人などに購入してもらい、それによって得ることが出来たお金も充(あ)てることでようやく間に合うということになります。これは国が抱えている借金が増えてしまうことを意味しており、プライマリーバランスが赤字である限り増え方にもいろいろあるでしょうが、それまでと比べ借金が積み重なり増えてしまうことに違いはありません。このような状況を回避するにはプライマリーバランスを黒字にするしかありません。国債の返済や利払いを除いた政府の支出をすべて税収などでまかなうということです。黒字化する必要があると言っている人々は赤字のまま、つまり借金が増え続けるのは良くないと主張していることとなります。どうして借金が増え続けてしまうとよくないのか。黒字化を主張する人々は日本の国債や財政に対する信頼が揺らいでしまうから、とか今後生まれてくる世代に借金のツケを背負わせてしまうことになるからなどと説明しています。信頼が揺らぐということについてですが、このまま借金が増え続けることになると国債の元本の返済はもちろん利子も支払い続けなければなりません。現在は日本国の物価上昇が非常に低い状況なので金融商品の利子も低水準で推移しているものの、これがデフレ、物価の下落を克服するために日本政府や日本銀行の経済政策によって一定の水準まで物価が上昇してくると金融商品の利子も上昇してくるので、その時に莫大な額の国債を背負っているとその利払いに必要なお金も大変な額となってしまいますと。借金が膨れ上がってしまうと日本政府は発行した国債の償還に今後も本当に応じてくれるのだろうかと疑問に思う投資家も増えてきてしまうのではないかと心配するわけです。そうなると国債を購入してくれる投資家が減少してしまい、日本国債の利子を高くしなければ買ってくれなくなる状況が到来するかもしれないのではないかと。そうなればますます利払いに必要なお金が増えてしまい日本国の財政を圧迫してしまう。そうなれば必要な政策に使うことが出来るお金がますます減ってしまう。日本国が借金で首が回らなくなってしまうと考えるようです。そうなってしまうと将来日本に生まれてくる世代は彼らが活躍する時代になった時、歳入の中から必要な政策、公的な事業にしっかりとお金を使うことが出来なくなってしまうのではないか、現在の世代がどんどん借金を作り現在の予算としてお金を使ってしまうとそういった将来の世代の人々に迷惑をかけることになってしまうのではないかというわけです。
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黒字化のために提案されていること
現在の日本政府はプライマリーバランスを黒字化するべきだという考えに立って財政政策を実施しています。政府や財政を担当する官庁である財務省は財政健全化、プライマリーバランスを黒字化するためにどのような主張をしているでしょう。財務省のホームページ内に作成されているページ「参考資料・日本はどのように財政健全化を図っていくのか」では政府の予算の組み方に関する方針がいくつかの項目にまとめられています。その中で経済の動向を踏まえはするものの、社会保障関係の予算は増加すること自体避けられはしないが、増加額は日本社会が高齢化することで増加してしまう程度に抑える(他の要因で社会保障費を増額することは避ける)といった項目や社会保障費とは異なる分野の予算については政策の優先順位を再検討し予算の無駄をしっかり削減して必要な分野にしっかりお金を使うといった、予算内容の削減に十分配慮するといった内容の項目がありました。地方で必要となる予算についてはこれまでの水準を下回らないように確保するとうたわれているので地方に充てる予算を削減しないというように読めるような気もしますが、地方で負担する社会保障費の増加ぶんなどといった地方の支出の増加を抑えるということにもなるようです。ということで社会保障費は高齢化による増加に伴う伸びにとどめて他の要因による増加を抑え、社会保障費とは異なる分野についても予算額を切り詰め、地方に回すお金に関しても予算増加を抑えていく方針ということになるようです。政府とは異なる立場の財界からも財政の健全化を求める声があり、財界を象徴するような経済団体の一つである経団連からも政府の歳出に関し継続して改革するよう(つまり歳出を削減するようにということ)意見が出されています。2018年に作成された「わが国財政の健全化に向けた基本的考え方」と題された報告書の中では社会保障に関係する政府予算の増加だけではなく社会保障給付そのものの増加についても抑制する必要があるとしています。「給付の適正化を通じた過剰な給付の削減」、「真に必要な人への真に必要なサービスの給付」、「利用者負担の適正化」といった内容が列挙されていますので医療保険、介護保険などをはじめとした分野で保険で賄われていた額のいくらかを利用者が負担するような、利用者へ負担のしわ寄せがくるような変化を求めているということなのでしょう。また地方の財政に関しても支出をしっかりと精査して歳出額を適正にするべきだとしています。つまり無駄がないか徹底して調べ出来るだけ地方の予算を切り詰めるべきだということかと思われます。社会保障や地方財政の分野について言及していますので政府(財務省)と経団連は似たような主張をしているということのようです。
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今回はプライマリーバランスの黒字化が必要な理由について一部取り上げました。昨今は新型コロナウィルスの蔓延を理由に経済状況の悪化を防ぐことや生活を支援するといった目的で一般国民や法人に給付金が支給されるような対応がとられています。それによって政府による支出が当然増えることになりますので、本来目標とした期限までにプライマリーバランスを黒字化するということは難しくなりました。財政健全化目標達成が遠のいてしまったといった論調でこのような話題を取り上げるニュース番組もあり、そのような報道を目にしてどうしてプライマリーバランスを黒字化する必要があると言われているのか理由を確認してみたくなり今回のようなテーマの記事にしております。プライマリーバランスの黒字化、財政悪化を食い止めなければならないという意見が主張される理由として、将来世代にツケを回さない、国債、財政に対する信頼を維持するためといったことを本文で挙げてみましたが、他にも国の財政状況が悪化するとそれを心配した国民が保有しているお金をあまり使わずに貯金にまわしてしまい日本の消費経済が活発にならないとか、日本政府が積極的にお金を使うようなことをするとその経済行為が民業を圧迫することにつながってしまうといった見方もあるのだそうです。どれほど的を得た意見なのか個人的にはよくわからないので紹介するだけにとどめておきます。結局プライマリーバランスの黒字化ということは政府が支出するお金を切り詰めるということに直結する大義名分なようです。これはどう考えても緊縮財政につながりますよね。国民一人当たり10万円を給付するという政策についても当初は否定的な意見を示していた政治家の方々がいたようです。否定した理由というのはやはり財政状況を圧迫するということが頭にあったからなのだと思います。しかしプライマリーバランス黒字化にばかり気を取られてしまうと手を打たなければならない目の前の悲惨な状況に対し見ているだけで何もしないなどという結果につながりかねません。その点で言えば10万円を給付した以前の政府の判断は適切だったのではないかと評価したくなります。しかしその一方でこのコロナウィルス蔓延の状況に経済面で対応するため消費減税を断行するべきだという政策提言が与党の一部や野党などからされていたにもかかわらずウィルス感染の流行から一年以上経過しているにもかかわらず政府に動きはありませんでした。借金が膨らみ過ぎては危ないという意見はわかるような気もしますが、どれくらいの規模になったら危ないのか、今の借金の規模がそれほど危険なものなのか、どういった理解が正しいのかわからないことが多いです。このような分野をテレビでわかりやすく説明してほしいという国民側の需要は結構あるのではないでしょうか。全国ネットのテレビにはぜひそういった内容を取り上げてもらいたいですし、公共の電波を使用しているのですから取り上げる責任があるように思います。
今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。 <(_ _)>
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