多くの公職選挙で供託金を必要とするのはなぜなのでしょう

多くの公職選挙で供託金が必要なのはなぜ

世の中の仕組み、様々な地位に関する選挙、公民分野の話題に関心を持たれてこのページに来られた皆様、こんにちは!この記事では日本国内で行われる多くの公職選挙で実施されている制度である、供託金(きょうたくきん)制度について、なぜ採用されているのかということを中心に私なりに書いてみたいと思います。供託金というのは公職選挙に立候補される方が法務省の所属機関、法務局(ほうむきょく)に預けるお金のことです。このお金、選挙が終わったら立候補された方に返金されることもありますが、選挙での結果によっては預けたお金が没収されて国や地方自治体のものとなります。公職選挙には色々ありますね。衆議院や参議院の議員さんを選ぶ国政選挙もあれば、自治体の議会である都道府県議会、市区町村議会の議員さんを選ぶ選挙もありますし、都道府県知事、市区町村長といった自治体の首長さんを選ぶ選挙もあります。こういった公職の大抵の選挙では選挙に立候補する人々に対し供託金を求めることとなっています。ただ一部の選挙、町村議会の議員さんを選ぶ公職選挙では供託金を必要としない決まりには現在なっています。供託金としてどれくらい法務局に預けなければならないかについては選挙によって色々で衆議院議員の小選挙区に立候補する場合は300万円も預けなければならないことになっていますし、参院選の比例代表になると立候補する政治団体あるいは政党が候補者一人当たり600万円も預けなければなりません。600万円。これは高い。都道府県知事の選挙に立候補する場合も300万円預けなければなりません。政令指定都市の市長さんを選ぶ選挙では少し安くなって240万円、普通の市の市長選挙では100万円、都道府県の議会議員選挙では60万円、政令指定都市の議会議員選挙では50万円、町村長を選ぶ選挙では50万円、普通の市議会議員選挙の場合は30万円となっているそうです。30万円から600万円まで、かなり幅があるものだということがわかります。こういったお金を預けないと立候補できないと法律で決まっているわけですが、なぜこのような仕組みを日本の政府は採用しているのでしょう。その理由として公職選挙を売名のために利用する行為を防止するためとか、候補の乱立を防ぐためだといった説明がされる場合が多いようです。

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売名や乱立

本気で選挙に当選するつもりではないのに、敢えて選挙に立候補し選挙区の人々に自分の名前を知ってもらおうという、本来の選挙の目的とはズレた理由で選挙に参加しようとする人がいて、そういった人たちの立候補を防ごうというのが供託金制度の一つの目的だと言われています。選挙に立候補して名前を知ってもらおうとする人は選挙区の人々に名前を覚えてもらうことでどの様な利益があるのでしょう。選挙における売名というのは一部芸能人やセレブの方たちがやるような売名とは目的が違ってくるようにも感じます。社会的に立派なことをあえて目立つようにおこなうことで自分に対する世間からの印象をより良くして芸能界の仕事につなげようとするなどといった話は耳にすることもありますが、選挙の場合ですと当選する可能性が低い選挙に立候補して名前を知ってもらうと、それとは位置づけの異なる選挙に立候補した場合、既に名前が知られていることで競い合う他の立候補者よりも有利な立場に立つことが期待できるかもしれません。具体的には都道府県議会議員選挙に立候補しても当選する可能性は低いけれど、敢えて立候補することで選挙区の人たちに名前を知ってもらい、その後により当選しやすい市や区の議会議員選挙に立候補して有利に選挙戦を戦おうといったようなところでしょうか。また候補の乱立については数名から5~6名の候補者が立候補して一つの当選枠を争うというのと何十人が立候補して一つの当選枠を争うというのとではやはり後者の方が選挙としては混乱というか、わかりにくくなる、選びにくくなるということはもしかしたらあるのかもしれません。ただこれに関しては何十人と立候補する方々が皆真剣な考えをもって立候補しているという場合、どの候補者の方々も分け隔てなく選挙に参加してもらって堂々と議論を戦わせるべきところでしょう。供託金という制度によって選挙を管理する側の都合で真剣に立候補したい人々から選挙に出る機会を奪うようなことは被選挙権を侵害しているようにも感じます。実際、供託金制度が採用されていても東京都知事選挙のような一人の知事さんを選ぶ選挙であってもたくさんのかたが立候補されています。2012年の場合は9名、2016年の場合は21名もの方々が立候補されていました。だからといって選挙が混乱したということはそれほど無かったように感じますが。選挙の広報は立候補者が多いと全員を紹介しなければなりませんから紙をより多く使用しなければならないということはあるのでしょうね。

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他国にもあるけれど

他国ももちろん選挙が行われますが、供託金を候補者に求める制度を採用している国もあれば求めない国もあるようです。先進国か発展途上国かで傾向があるというわけでもなく文字通り様々です。判明した範囲で具体的に国名を挙げていくと先進国に位置付けられるアメリカやフランス、ドイツ、イタリア。供託金制度が現在採用されていないそうです。イギリスやカナダ。供託金制度があります。G7以外の国では韓国やマレーシア、インド、台湾(日本政府の立場では国ではありませんが)などでも供託金制度があります。一方G20構成国であるメキシコには供託金はありません。トルコは無所属候補の場合に限定した供託金制度があるそうです。ということで供託金という仕組みを実施しているのは日本だけではないということがわかりますが、日本の場合、国政選挙の供託金ということで言えば他国に比べ供託金の額が著しく高くなっていることは注目に値すると思います。先ほどの項目で衆院選小選挙区の場合300万円必要と書きましたが、供託金を採用している国でこのような多額のお金を要求している国は他にありません。多くても韓国の約150万円、シンガポールの約120万円くらいでしょうか。アジアの国はちょっと高めなようです。台湾は70万円くらいでマレーシアは30万円くらい。供託金制度を採用している他の先進国、イギリス、カナダはどうかというとイギリスは日本円にして7万円だとか8万円などと言われていますし、カナダは8万円程度のお金なのだそうです。我が国と比べて桁が全然違います。供託金とは異なる条件を候補者に求めている国もあります。スイスやスウェーデンでは支持をしますという署名を決められた人数分集めることが出来れば立候補できるということになっているそうです。これはなかなか合理的な感じもしますが。ということで供託金制度を採用している国が他にもあり、確かに結構高額のお金を要求する国は他に無いわけではないものの、日本に匹敵するような高い額のお金を供託金として国政選挙の立候補者に要求するような国は無い、ということは間違いのないところです。

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今回は選挙の際に立候補者が公的機関に預けなければならないことになっているお金、供託金について一部取り上げました。私が供託金の存在を知ったのは動画サイトである政党の代表がこの供託金について考えるところを色々と述べていたのをたまたま視聴したからです。その動画を視聴していて被選挙権というのは25歳以上の日本国民とか30歳以上の日本国民だとされていたように記憶していたため、憲法でそういったことを決めているのによく供託金のような仕組みがまかり通っているなぁと感じました。不満に感じる人が裁判でも起こしそうなものです。そのため供託金という制度をあえて導入している理由が何か確認しようと思い今回のテーマのように記事にしてみました。理由は売名防止や候補者乱立防止というのが法務省など公的機関側の説明のようですけれど、現在のように供託金を必要とするようにしていても売名する人は売名するし、選挙によっては本文でも触れたように候補が乱立するように思いますので供託金制度がそれほど機能しているのかというと少し疑問にも感じます。実際、他の先進国では供託金無しで選挙が支障なく実施できているところもあるわけですし。なくてもあまり変わりがない、なんてことは無いのでしょうか。国会議員側から供託金無しにしようという動きが出てこないというのも妙な気がしましたが、供託金が無しになると選挙の際に自分たちに不利に働くといった目論見があれば今のままでいいか、ということにもなるのかもしれません。与党になるような大政党にとってはこれまでお金を出せないことで立候補できなかった人が選挙に参入してくることは結構脅威に映る、なーんてことがあるのかどうなのか。与党になるような方々はきっと選挙に強い方々でしょうから供託金を廃止して新参の候補者が多少出てきたところで痛くも痒くもなさそうですけれどね。最後に供託金制度の目的として一部で言われている見方に触れておきます。高い額の供託金を求める仕組みを続けているのは低所得者層の立場に立った候補者や共産勢力、社会主義勢力を出来るだけ立候補させないため、そんな見立てをされているかたもいるようです。日本で供託金制度が導入されることになったのは戦前の普通選挙導入が決まった大正十四年、1925年のことです。この時期の体制側の方々は政界での社会主義勢力台頭を大変憂慮していたのは歴史的経緯を見ても明らかですから先ほどの見立ては意外と的を得ているのかもしれません。そういうことになると日本国憲法の内容と矛盾するから供託金なんて廃止したほうがいいと考えていいものなのかどうなのか個人的にはちょっとわからなくなってきてしまいました。

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

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選挙制度に関する話「平成六年に中選挙区制を廃止した理由は何だったのでしょう」はこちらです。

選挙制度に関する話「衆議院総選挙の一つ、比例代表制とは?利点や欠点についても」はこちらです。

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