プライマリーバランスの黒字化必要論は嘘だという意見について

プライマリーバランスの黒字化が必要なんて嘘という見方

日常テレビや新聞などで取り上げられるニュースで出てくる用語や日本の経済、特に財政にまつわる話について関心を持たれてこのページに来られた皆様、こんにちは!この記事では日本政府が長らく財政状況を改善するにあたって用いてきている数値、物差しであるプライマリーバランスを黒字化する必要があるという考え方は財政状態を改善させるという点で嘘であり、黒字化が必要であるという考えに基づいた財政緊縮政策はかえって日本の財政状態を悪化させるという意見について自分なりに書いてみたいと思います。前回の記事でも説明をしましたが、プライマリーバランスというのは歳入と歳出の中から国債、つまり政府による借り入れで入手したお金と国債の元本の支払い、利子の支払いを差し引いた収支、収入額と支出額のことを言います。プライマリーバランスが黒字ということは政府の税収額が国債の元本返済、利払いを差し引いた政府支出額を上回っている状態だということを意味しています。一方プライマリーバランスが赤字ということは政府の税収だけでは国債の元本返済、利払いを差し引いた政府支出を賄うことが出来ていない状態であることを意味しています。国が抱えている借金の全体額を減らしていくためには国債の元本返済、利払いを除いた政府支出が政府の税収額を下回る、つまりプライマリーバランスを黒字にしなければならないという意見は正しいようにも聞こえます。しかし、こうした政府支出の引き締めによって達成しようと日本政府が長らく取り組んできているプライマリーバランスの黒字化目標が財政再建のために必要などというのは嘘だ、という意見が一部で唱えられています。一体どういった理由からそのような意見が出てくるのでしょう。プライマリーバランスを黒字化させようという理由から政府が支出するお金を切り詰めてしまうと、巡り巡って政府の税収総額が減ってしまい、かえってプライマリーバランスの黒字化から遠のいた状況、プライマリーバランスの赤字幅が拡大してしまう。「プライマリーバランスの黒字化が必要だ」などというのは嘘です、と主張している人たちはそのような見方をしており、むしろ適切な規模の借金を毎年実施して、そのお金で政府が投資をおこなうことを通して税収を増やし、それによって毎年の国債発行額を少しずつ減らし財政改善につなげるべきだと指摘しているようです。

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プライマリーバランス黒字化路線を選択すると

プライマリーバランスを黒字化するために政府はどうするかと言えば、政府の支出を切り詰めて出来るだけ毎年作る借金の額を減らそうとします。2020年の方針では新型コロナウィルスやそれ以前に景気が悪化していたことなどが影響したのか、プライマリーバランスを黒字化するという文言が無くなったのですが、2018年に政府が掲げた目標では令和七年度(2025年度)にプライマリーバランスを黒字にするとしていました。そのような目標を掲げた場合、各省庁の予算額を縮小するよう圧力が加わることは明らかです。予算額全体は報道機関でも取り上げられる通り100兆円を超える規模となっていますので巨額なのは間違いありませんが、この予算額自体の大きさよりもどのくらい予算額が過去と比べて伸びているかが重要であると一部の人々は主張しています。予算額が減少したり、増え方が乏しいとどうなるのでしょう。日本経済にかかるデフレ(デフレーション、物価下落、物よりお金の価値が上がる)圧力が強まってしまうというのです。確かに政府が予算として支出するお金というのは結果的に世の中に出回ることになります。世の中に出回るお金の量が増加するとその国の経済はインフレ(インフレーション、物価上昇、お金より物の価値が上がる)方向の圧力が強まるでしょうし、増え方が小さかったり、過去に比べて少ない額しか政府が使わなければ世の中に出回るお金の量がさほど増えなかったり減ってしまうということでデフレ方向に圧力がかかります。政府が予算を切り詰めることで世の中がデフレ気味になるとそれほど景気も活性化せず、期待するほど国の税収も伸びません。そうなれば必要な予算に充てられるお金は限られるので国債発行にさらに頼らざるを得なくなり、借金の累積額が必要以上に早く増加してしまうというわけです。プライマリーバランス黒字化のため予算の切りつめ→デフレ圧力強まる→税収の減少あるいは大して増加しない→必要となる国債発行額の増加→累積する借金額の増加速度が増して財政状況の改善からかえって遠ざかってしまう、といった悪循環が起きてしまうことを理由に一部の人々は財政健全化の目標としてプライマリーバランスを黒字化するために予算額を切り詰めようとするべきではないと主張しているのです。切り詰めるのは間違いだということは予算額をケチってはいけない、必要な分野にはしっかりお金を使っていこうということになります。しかしどのくらいの規模の予算額を考えればいいのでしょう。

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まずはデフレから抜け出す

プライマリーバランスを黒字化することを目標に予算額を切り詰めてはいけないと考える人々は、財政状況が悪化したのは日本経済が以前からデフレになってしまっているからだと見ているようです。そしてこのデフレ状況を抜け出さなければ、税収のしっかりとした増加を期待することは出来ないと考えます。そのためまずはデフレ状況から抜け出すことが出来るよう政府がしっかりお金を使う、予算をケチらず借金をしてでもお金を使い、物資を消費してインフレ方向に変化するような、物価が許容できる範囲内で上昇するような政策をおこなうべきだというのです。物価が2%上昇するような穏やかなインフレを日本銀行も目標としていますし、それくらいの水準になるまでは借金が増加することをとやかく言わず国債を発行して必要とされる事業にお金を使え、ということを言っているわけですね。そしてデフレから抜け出した後は目標とするGDP、国内総生産の規模に近付けるよう毎年一定割合予算額を増やしていくようにするのが良いのだそうです。割合というのは3%程度のもので極端に大きな割合を言っているわけではないようです。デフレを抜け出すことが出来れば、予算規模を毎年数パーセント増やすとGDPもそれに応じたような割合、数パーセント拡大することが期待出来、GDPが拡大すると必然的に税収も増えてくるということのようです。ここでGDPが出てきておりますが、どうしてなのか。国際的にそれぞれの国の財政状況がどうなっているかを評価するにあたっては借金の額そのものではなく、その国の経済規模に比較して借金総額がどれくらいの割合なのか、その比率が用いられているのだそうです。ということで経済規模を示すGDPが重要な要素となってくるのです。確かにこれまでに日本政府が作ってきた借金の額は巨額ではありますが、その一方で日本国の国内総生産額が大きく、しっかりした額であれば別に国の借金をそれほど心配する必要も無いと考えることが出来る、一部の学者さんや経済の専門家、政治家の人たちはそのような議論をしています。ところが政府予算を切り詰めてしまうとGDPの伸びは鈍化してしまいます。税収も伸びません。その一方で国債を発行して借金だけが累積するような傾向が延々と続くことになりますので、借金だけ増えてGDPはそれほど増えず、借金総額はGDPとの比率で割合が増加し財政状況がさらに歪んでしまうという皮肉なことになってしまいます。

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今回は財政状況を改善させるために国の予算額を切り詰めてプライマリーバランスを黒字化するというのが正しいとする主張は嘘だという意見について一部取り上げました。前回に引き続きプライマリーバランスや財政健全化に関する話題としています。国の財政状況に関する話題は重要だと思いますので一つの意見だけではなく、かなり内容の異なる対応策を提案しているのならば、その別の意見についても出来るだけ確認してみたいと思い今回のようなテーマとしています。政府やその内部の官庁である財務省、民間の有力組織である経団連などはプライマリーバランス黒字化を実現するため社会保障を含めた様々な政府の事業に投じるお金や地方に回すお金が膨れ上がらないよう切り詰める必要があるといった立場なのですが、今回取り上げている意見は予算切りつめとは異なり必要な政府の事業に大胆にお金を使い、速やかにまずデフレ状況を抜け出すことだという立場なので相当意見に隔たりがありますね。後者の意見に従えば近視眼的にはプライマリーバランスの赤字幅がどんどん拡大することになります。でもそれでもいいんだよと、後々デフレを抜け出せば税収が増えてくるから今みたいに多額の国債を毎年発行しなくても済むようになるんですよというのです。正直これまでの政府が進めてきた路線だと予算を切り詰めることで色々な分野に経済的なしわ寄せがいってしまっていたのでしょうから不満な人たちもたくさんいたことでしょう。デフレ脱却最優先路線のほうが多くの国民にとっては受け入れやすい選択肢なのかなぁという気がします。ただ気になることがあります。デフレ脱却路線が有効であるのならばどうして政府はそれを採用してこなかったのでしょう。1990年代後半頃からデフレになっていったと言われているようですが、今は2020年代に入っておりデフレ突入の時期から20年以上経過しています。その間なかなか財政状況が改善しなかったというのなら途中で路線変更しても良さそうなものです。国の財政をつかさどる人たちがデフレ脱却最優先路線を採用しないのは何かその路線に落とし穴があるからなのか、あるいは財政切りつめ路線を選択することによる一般国民にはうかがい知れない利点でもあるのでしょうか。うまくいかない路線であれば別の方法を採用してみるといった勇気を国の財政に携わる人たちにはぜひ持ってもらいたいものですし、そういったことの出来る政治勢力を国政選挙の時には選びたいなと個人的に感じました。

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

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最近の我が国のデフレについて触れている話「平成の日本がデフレになったのはいつからなのでしょう」はこちらです。

第2次安倍政権の経済政策について触れている話「アベノミクス当初の金融政策はどんな特徴があったのでしょう」はこちらです。

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