ロシアはどのような理由でシリアを支援しているのでしょう

ロシア連邦がシリア政府を支援する理由

 

現在中東地域の国、シリア・アラブ共和国では非常に激しい内戦が続いています。イスラム国と名乗る武装勢力の勢いがかつてに比べ相当弱まっているそうですが、そうなった今でもシリア政府勢力と政府に反発する複数の勢力の間で戦闘がおこなわれ、終わる様子はありません。化学兵器が使用されたとか医療施設が空爆されたといった非常に残酷な話も伝わってきます。このシリアの内戦には他の国もかなり介入しています。アメリカ合衆国やEU(ヨーロッパ連合)は一部の反政府勢力を支援しているそうですし、その一方ロシア連邦やイラン・イスラム共和国などはシリア政府を支援しているといった構図があり、シリアを巡って超大国、地域大国が対立することも多いようです。国家間の関係が複雑な感じもしますが、その中の一つ、ロシア連邦がシリア政府を支援しているこの関係というのは一体どのような理由によるのでしょう。ロシア連邦とシリア・アラブ共和国は距離的に決して遠いわけではないものの、国境を接するほど近い国でもありません。なぜシリア政府寄りでロシアは内戦に介入しているのでしょう。その理由として友好国の確保、ロシア国内の治安の維持、海外拠点の確保、ロシア系の人々の保護といったことがよく挙げられるようです。

 

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友好国の確保

 

中東地域にはロシアにとって比較的関係の親密な国がありました。カダフィという人が統治していた頃のリビア(現在正式名称はリビア国。カダフィさんの統治がおこなわれていた頃は「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」)です。カダフィさんの頃のリビアはアメリカや西欧諸国との関係が悪かったことは有名で、その反対にロシアとの関係は親密でした。ソビエト連邦が存在していた頃からリビアとの関係は良く、軍事的な支援もソ連からおこなわれていました。でもカダフィさんの体制は2011年に崩壊します。NATO(北大西洋条約機構)、アメリカやヨーロッパの国々が参加する軍事同盟ですが、このNATOの軍がリビアの内戦に介入し実質的にカダフィさんの体制を倒す後押しをしていました。これによってロシアは友好的な中東の政権を一つ失ってしまうことになります。また地域は異なりますがロシア連邦の周辺でも体制が変わる国が出てきてどちらかというとロシア寄りからアメリカ、EU寄りになりました。東ヨーロッパのウクライナはいい例です。中央アジアのキルギス共和国も一時的にではありますがそのような動きがありました。ロシアとしては自国と友好的な政権が倒れて欧米側についてしまうような流れが拡大してしまうと自国の国際社会での影響力が弱まってしまうことになるので、そのような流れを食い止めたいわけです。ロシアにとっては嫌なことに、シリアでもリビアの時と同じように内戦が起きてロシアと友好関係にある政権側が窮地に立たされてしまいました。ここでシリアの政権が倒されるとシリアに親米、親EUの政権が出来てしまうかもしれない。それはまずいということでシリア政府を支援するために内戦に介入したというわけです。

 

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ロシア国内の治安維持

 

シリアの内戦には他国のイスラム教過激派の人たちも反政府勢力を支援するために参加しているそうで、その中にはロシア中央政府の政治に反発しているチェチェン地域の人たちもいるのだそうです。チェチェンはロシア連邦に所属している共和国でトルコの東側、イランの北側あたりに近い地域に存在しています。このロシア政府に反発している人たちがシリアでの内戦で勝利して勢いをつけてチェチェンに戻るようなことになれば、ロシア国内で破壊活動を活発化させる恐れがあり、ロシア国内の治安維持上深刻な問題になりかねません。

 

海外の拠点の確保

 

シリア政府との関係が良いロシアはシリア国内にロシア海軍の拠点を置かせてもらっています。基地といったものではありませんがロシア海軍の補給に利用するような施設がシリアの地中海沿岸側にあります。タルトゥースという都市にあるそうですが、このようなロシア軍の海外展開に関連する重要な拠点をシリア政府が崩壊した場合には失うことになるかもしれません。ロシア側にとっては当然避けたいところです。

 

ロシア系の人たちの保護

 

シリア政府支配地域にはロシアに関係する人たちがたくさん住んでいるそうです。ソビエト連邦がシリアと軍事協力関係を持っていたことにより二国間で軍事技術教育や留学などを理由とする人的な交流が盛んになっていました。国際結婚することになった事例も多かったようで、シリア国内に移り住んだロシア出身の方々もたくさんいたそうです。そういったいきさつで政府側が支配している地域で生活しているロシア系の人たちは多く、ロシア連邦にとって彼らは同胞ですから、そういった人たちを保護するためにも政府側に崩壊されてもらっては困るわけです。このような人的なつながりはシリア支援の有力な動機となっているという指摘があるようです。

 

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今回はロシア連邦とシリア政府の関係について一部取りあげました。シリアの内戦は戦争の被害に焦点が集まりはするものの、国家間がどのような関係にあるかニュースでも時間の都合があるのかいちいち説明はしてもらえないので「戦争で大変だよなぁ」くらいの理解しかありませんでした。ロシアはアメリカとの関係が良くないということはよく耳にしますけれど、敢えてシリアの問題でロシアがアメリカと対立する行動をとるのは何故なのかよくわからないこともあってこのようなテーマの記事を今回作っています。国際社会で友人を確保したい、減らしたくないという考えは理解できます。ただ、内戦に介入するほどの動機になるのかなと疑問にも感じましたが、これを放置すると自国の体制崩壊につながるような話ならば確かに他人事で済ませられない話とも言えます。仮にシリアのアサド政権が倒れて親欧米の政権が誕生したとしてロシアのプーチンが権力の座から追われるようなことにどのように繋がっていくか想像はしにくいですが、実際にエジプトやリビアの体制が大きく変化した頃のいわゆる「アラブの春」という政治的な動きは確かに複数の国々に波及していきました。そんな流れでロシアの反体制派が勢い付いてしまうのはやはりロシアの現体制としては嫌でしょうね。そういった大国の事情と思われる内容を今回多少垣間見ることが出来ました。しかしこのシリアの内戦は何とかならないのでしょうか。シリアの国民の人たちが平和に生きていくことが出来る環境を整えるよう、内戦に介入しているアメリカにもロシアにもヨーロッパにも速やかに対処してもらわなければ困ります。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

ウクライナ地域の争いについて触れている話「ウクライナ問題とは?原因や、現在の状況について」はこちらです。

中東地域の別の国の対立について触れている話「カタールが国交断絶されてしまった原因は何なのでしょう」はこちらです。

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