WTOという機関が設立された目的は何だったのでしょう
WTOを設立した目的
WTOはWorld Trade Organizationの略語で、「世界貿易機関」と訳されています。多くの国が加盟している組織で本部はスイスのジュネーブにあり国際連合に所属する機関という位置付けになっているそうです。平成7年、西暦1995年に設立されました。日本も加盟しており、この組織を運営するために必要な予算を日本政府も他国と協力し負担しています。この組織は国際的な貿易上の規則を実施していて、貿易に関する国家間の交渉を手伝ったり、貿易に関する国家間の争いごとを解決する手助けをするといった役割も果たしています。WTOが設立された目的は自由に貿易をおこなう国際的な仕組みを促進するためと一言で表現することも出来るのですが、そういった理由だけであれば、かつて存在していた国際的な約束事、協定でよかったはずです。世界貿易に関するこのような組織がわざわざ設立された目的は何だったのでしょう。従来の国同士の取引の規則では対応しきれなくなったことや国家間の貿易上の問題に対応することが求められたことといった点がよく挙げられているようです。
スポンサーリンク
従来の規則で対応できない
世界中の経済が発展することにより、物品とは異なるサービスの貿易が経済に占める割合は大きくなっていきました。このサービスの貿易というのは物や人を運搬する行為や情報や通信、金融といった分野の産業が関わってくることになります。こういったサービスの貿易に関する国際的な規則がそれまでしっかりと定められてはいなかったことで物以外のサービスでの貿易に関しても規則が必要だという考えが広がっていきました。また知的所有権の侵害を防ぐべきだという意見も強くなり、それに関する規則の充実も求められるようになります。従来のように貿易の中心的な存在であった物品に関する規則だけでは対応しきれなくなり新たなルールを求める意見が強まりました。
貿易上の紛争の解決
国家間の取引で発生してしまう問題をしっかりと解決出来る仕組みを作ろうという意見が強くなっていったようです。WTOが設立される以前はGATT、ガットと呼ばれる国際的な約束事が存在していましたが、GATTでは約束事に加盟している国々に対ししっかりと規則を守らせるような強制力のある仕組みになっていなかったそうです。前の項目で挙げた、従来のルールで現状の貿易をうまく運営できなくなってきたことやしっかりと紛争解決できる仕組みが乏しいことで新たな組織を作る必要があるという考えが強まりWTOという組織の設立に至ったということのようです。WTO加盟国にはWTOで決められた規則をしっかり守らなければならないという義務が現在では存在します。
スポンサーリンク
GATT
GATTというのは昭和23年、1948年に締結された国際的な約束事でGeneral Agreement on Tariffs and Tradeの略です。訳すと「関税と貿易についての一般的な協定」ということになります。この協定が作られたのは国家間の貿易に関する規制を和らげて自由な貿易を拡大するためでした。この考えはWTOの理念と大きな変わりはありません。GATTのもとでの国際的な交渉によってWTO設立が決められ、1995年にWTOが作られたことでGATTの役割をWTOが引き継ぐこととなり現在GATTという協定自体は存在していません。
今回は略語、WTOについて取りあげました。先日アメリカの大統領がWTOからの脱退を匂わせるような発言をしていました。それをたまたま耳にしてWTOという組織が貿易に関係する機関だということはなんとなく知っていましたが何を目的にしている組織なのか詳しくは知らなかったためこの組織について調べてみようと思いこのような記事を作ってみました。出来るだけ自由な貿易を実施するため、知的財産を保護するためそのような目的を実現するためのルールを加盟国にしっかり守ってもらうための組織ということのようです。
スポンサーリンク
もしこの枠組みからアメリカが離脱するということになるとアメリカは貿易上の国際的な規制を受けなくなることになってアメリカ政府のやりたいように関税をかけることにつながるのかもしれません。今でも大統領の意向で気ままに関税を上げたりしているようにも見えますが、アメリカがそのような傾向を更に強めることも、WTOの制約がなくなれば論理的には可能ですよね。先ほど少し触れたGATTという自由貿易促進のための協定は第二次世界大戦発生の原因の一つに世界恐慌後の各国の経済のブロック化、他国からの輸入に対し極端に高い関税をかけるなどして国内産業の保護をはかったことがあったという反省を背景にして作られたと言われています。経済のブロック化によって輸出が困難となり一部の国で経済状況が全然良くならず、社会が混乱し膨張主義を進める、他国を侵略する政治勢力を台頭させたということですね。貿易の仕組みと戦争というのはなかなか結びつきが想像しにくい感じがしますけれど関係が深いもののようです。他国との貿易をおこなう上で保護主義的な要素をどんどん排除するなどということはやり過ぎのような感じもしますが、超大国がWTOという枠組みから離脱して自由貿易の一定の枠組みに関与しないという状態も考え物のような気はします。今後アメリカがWTOから抜けて世界経済が混乱するなどということにならなければいいのですが。
今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。 <(_ _)>
※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。
日米の貿易摩擦について触れている話「牛肉とオレンジの貿易自由化がなぜおこなわれたのでしょう」はこちらです。
戦後の食料輸入や自給率について触れている話「高度成長期に日本の食料自給率が低下した理由は何でしょう?」はこちらです。
最近のコメント