高度成長期に日本の食料自給率が低下した理由は何でしょう?

高度成長期に食料自給率が低下した理由

 

日本の高度経済成長期というのは西暦1954年(昭和29年)の年末から1973年までの期間を指すことが多いようですが、この期間に日本の食料自給率は下降していくことになります。1960年の食料自給率は79%だったけれども、1973年には53%にまで下がってしまったなどという指摘もあるようです。かなり下がっているように見えますが、何が原因でこのような変化が起きたのでしょう。理由としては日本国民の食事内容の変化、農産物貿易の自由化、国内農産物の価格の上昇といったことがよく挙げられているようです。

 

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国民の食事の変化

 

戦後、日本国民の食事の内容が変化していきました。1960年代の変化の傾向で言うと食事の中でお米の摂取量の占める割合が減って牛肉をはじめとする肉の摂取量や脂肪分の摂取量がとても増えています。肉や脂肪分の摂取の割合が増加するという傾向は1960年代以降もしばらく続くことになります。日本国内でのお米の供給能力はとても高いのですが、肉の場合、肉となる家畜の飼育に必要な「えさ」、飼料(しりょう)は多くを他国からの輸入に頼る結果となりました。他国の家畜用の飼料は価格が安いため畜産農家にとっては経費節約のためにありがたい存在でした。また脂肪分の原料になる穀物には多くが他国の安い生産物が使われていました。このように肉や脂肪分は他国からの輸入に頼る割合が多い食品なのですが、高度成長期の日本国民はそのような食品を好んで摂取するようになったため、実際の食料消費内容を日本国内でまかなっている割合は下がってしまう結果となりました。

 

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農産物の貿易自由化

 

日本は1955年に国際的な協定、GATT(ガット)というものに参加しました。GATTというのは「関税貿易に関する一般協定」という名称の頭文字からきている呼び名だそうです。この協定は貿易をする際に各国が輸入品にかける関税を減らして、より自由な貿易を促進していきましょうという目的で作られた約束事でした。日本がこの協定に参加することによって他国の多くの種類の農産物があまり関税をかけられていない状態で日本国内に流入することになります。輸入された農産物は関税をあまりかけられていないと安い価格で日本国内のお店に並ぶことになります。日本国内の農産物は安い他国の農産物と競争しなければならなくなりました。一般の消費者はどうしても安い農産物を購入することが多くなりますので、輸入農産物の消費量は増加していくことになります。輸入農産物との競争に勝てないことで利益を得られなくなれば農業従事者の方たちも儲からない農作物を作り続けるわけにいきませんので、強い競争力を持った輸入品と同じ作物を生産しなくなりますから自給率は下がっていきました。

 

国内農産物価格の上昇

 

貿易自由化の話とも重なるのですが、国内で生産される農産物の値段は高くなってしまう傾向にあったようです。高度経済成長期に入って農業従事者として労働するよりも他の仕事をしたほうがお金を稼げる時代に入っていきました。そのため農業をやる人たちが減っていきました。少ない人数で農業をやるとなると作業を効率化しなければなりませんから農業用の機械を導入するようなことをしないと今までと同じような生産量を維持することが出来なくなります。そういった機械化の為には当然お金がかかります。そのお金は農産物を売る時の価格に反映させなければなりません。そして農業従事者の方々も人手を確保するためにお金が必要ですが、人手を確保するための費用も高くなっていったそうです。その為の費用も農産物価格に反映されることになります。また、日本の農業従事者は物凄く広い土地を所有し農業をおこなっているわけではありません。使用する土地は広くないので生産される農産物の量も使用する土地の広さに伴いそれほど多くはありません。比較的少ない収穫物で儲けを得なければなりませんのでどうしても農産物の単価が高くなってしまうような構造になってしまっているようです。そのような状況で他国からの安い農作物が国内に流入して競争にさらされて負けてしまう、ということにつながったようです。

 

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今回は高度経済成長期に日本の食料自給率が下がったという現象について一部取りあげました。一人一人の国民、社会にとって食料は欠かせないものですが、その多くを他国の生産物に頼っているというのは個人的には心配に感じます。また食料自給率が低いということはよく聞く話なのですが、その理由と言ってもよくわからず、特に高度経済成長とどう関係しているのか想像しにくかったので、確認してみたく今回のようなテーマにしてみました。日本国民の食品の嗜好が変化したというのは仕方のないことのような気がします。お米ばっかりの食事よりも種類に富んだ食事をしたいと考えるのが人情でしょうし、購入することが出来るならおいしいものを食べたいと思うでしょうし。畜産に必要な飼料を日本国内で価格を安く生産することは日本の国土の特徴上広大な土地を確保しづらいといった理由でなかなか難しいのだそうです。ということで畜産による食品の多くはどうしても他国からの輸入に頼らざるを得ないわけなので、もし他国からの輸入があてに出来なくなった時、肉を食べるということは難しくなってしまうのでしょう。そうなると魚介類が重要な蛋白源となります。魚介類の自給率をしっかり確保する必要があるということになるのでしょうか。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

特定食材の自給率に関する話「日本の豚肉の自給率は?豚肉の輸入先や畜産農家数についても」はこちらです。

他国との貿易から自国産業を保護することについて触れている話「貿易における保護主義とは?メリットやデメリットについて」はこちらです。

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