第1次西園寺内閣の時に出来た鉄道国有法とは?作られた理由も

鉄道国有法とは

 

鉄道国有法とは西暦1906年(明治39年)に作られた法律です。この法律によって日本の主要な鉄道は国が運営することとなりました。一部地方鉄道は対象外となっています(民間会社が運営することを認めました)。

大正時代に改正されますが、その後もこの法律はずっと存続します。廃止されたのは国鉄を民営化した1987年(昭和62年)です。81年存続した法律ということになります。

元々国が運営していた鉄道の長さはこの鉄道国有法によって国が運営することとなった鉄道の長さの合計、7100kmの内の36%に過ぎませんでした。残り64%の鉄道は民間会社が運営していた鉄道を買い上げたものです。1906年の10月から一年の間に計17社の民間鉄道が買い上げられました。

 

スポンサーリンク

鉄道国有法が作られた理由

 

鉄道は基本的に国が運営すべきだ、という意見を主張していた人は以前からいたようです。民間会社が運営した場合は経費削減にどうしても意識が向くため、鉄道の安全性や品質を改善することに疎くなってしまう。利益の上がらない路線を廃止する結果につながってしまう。そのため全国に本来必要な鉄道網が整備されない、維持されないことになってしまう。一般の国道と同様、鉄道も国が運営すべきだ。そのような考えから国が運営するのが望ましいと主張されていたようです。

この法律が定められたころは軍部も国が運営するのが望ましいという考えを持っていたようです。軍事輸送、軍事作戦の為に必要な兵器、物資の運搬は敵に知られたくないので出来るだけ秘密の状態で実施したいのが普通でしょう。

しかし民間鉄道を利用して軍事輸送などしてしまうと鉄道を経営している民間会社はその会社の株主に対して軍部が本来秘密にしたい軍事輸送の実態も説明しなければなりません。株主にきちんとした経営報告をしない場合、会社の経営陣は株主から批判されてしまいますので経営陣は例え軍事関連の輸送でも株主に秘密にしておくことは困難です。このように民間鉄道ですと軍にとって非常に不都合なため鉄道の国有化が望ましいと考えました。

他には鉄道経営が上手くいかず、政府に買い上げてもらいたがっている一部の民間鉄道会社からの求めもあったそうですし、国が一括して鉄道を運営することで車両を効率的に運用出来ることや、収益が出にくく高い運賃で経営されていた鉄道の地域も他の収益の上がる鉄道地域の利益と合わせて運営できるため、国有化以前より運賃を下げることが出来ると考えられ、財界の中に国有化を支持する意見があったようです。ただし財界には反対意見もあったようですが。

 

スポンサーリンク

第1次西園寺内閣

 

第1次西園寺内閣は桂太郎内閣が日比谷焼打ち事件など政府に対する反発が続いたことで退陣した後、1906年(明治39年)に発足しています。首相は西園寺公望(さいおんじきんもち)という公家(貴族階級のようなものですね)の家柄出身のかたで、当時大きな政党だった立憲政友会でトップ、総裁を務めていました。この人が首相となった内閣で鉄道国有法が定められています。南満州鉄道株式会社の設立もこの人の内閣で行われました。

他には軍備の拡張もしています。1906年に陸軍において2個師団増やし計19師団にしました。師団というのは軍の部隊の単位で、場合によって幅がありますが1個師団に6000人以上の兵員が所属するものなのだそうです。

たくさんのお金が必要となる政策を手掛けましたが、1907年に大変な不況となったそうで内閣の方針も行き詰ってしまいました。1908年に総辞職し退陣しますが、国の借金を減らす手立てをきちんととっていない、社会主義者の取締がきちんと出来ていないといった批判が政治的発言力の強い元老から出たそうで、それが総辞職の理由となったという指摘があるそうです。

 

スポンサーリンク

今回は鉄道国有法や第1次西園寺内閣について取りあげてみました。歴史関連記事で日露戦争の終了あたりまで取りあげてきました。今回日露戦争終了後に誕生した第1次西園寺内閣について取りあげてみたかったものの、この内閣自体は一般的にあまり関心を持たれてはいないようでした。特徴的な政策を中心にした記事にしようと思ったところ鉄道国有法がこの内閣で制定されたことが大変有名だそうなのでこの鉄道国有法を調べてみたわけです。

記事を作るにあたり鉄道を国有化することの利点を調べてみましたけれど、現在民営化した鉄道を利用している時代ですので、それらの利点が生かされていない状態ということになりますよね。

鉄道国有化の利点と反対の事態になるということなので、例えば鉄道の品質を維持したり、より良くするよりも利益を安定させることを優先しがちになるとか、安全保障上必要な輸送を秘密に実施しづらいとか、地域によって運賃に格差が生じてしまうとか。そういうことに繋がってしまうのでしょうか。

鉄道経営は民営化されてしばらく経過しているのですが、そういった傾向が今後顕著にならないといいなぁと感じました。経営状態が良くない地域の会社では路線の廃止など、見直しも検討されているようですし、民営化すると全国一律のサービス、一定水準のサービスの維持というのは難しくなるかもしれませんね。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

国内鉄道関連記事「明治政府が重視した殖産興業とは?目的や政策の内容について」はこちらです。

陸上交通関連記事「福島事件とは?県令として話に関わる三島さんについても」はこちらです。

関連記事

最近のコメント

    ページ上部へ戻る