1934年の帝人事件とは?斎藤実内閣への影響についても

帝人事件とは

帝人事件(ていじんじけん)とは西暦1934年(昭和9年)に発生した、贈収賄疑いによって政財界関係者が複数名逮捕されたという出来事です。この事件は「帝人」と呼ばれた、帝国人造絹糸株式会社(ていこくじんぞうけんしかぶしきがいしゃ)という会社の株をめぐる話です。帝人は一時期大変栄えた貿易会社、鈴木商店(すずきしょうてん)の関連会社でした。鈴木商店は第一次世界大戦後の不況で経営が傾き銀行から多額の資金援助してもらわなければならない状態となりましたが銀行からお金を貸してもらう時の担保として関連会社である帝人の株を銀行に渡しました。そういった事情で鈴木商店に多額の金を貸した台湾銀行は帝人の株をたくさん持っていました。

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当時人絹という素材(化学繊維のレーヨンのことですね)は注目されていたようで今後帝人の株価は上がるだろうと見ていた人たちもいました。企業経営者の私的なグループが台湾銀行の持っている帝人株を買い取ろうとします。このような話は政治家や大蔵省関係者に仲介してもらうと話が進みやすいと判断したのでしょう。間に当時の文部大臣や大蔵省次官などに入ってもらって財界グループと台湾銀行の間での帝人株の買い取り話が合意されました。台湾銀行から買い取った帝人株の株価は帝人が増資をおこなったという情報を市場関係者が好意的に受け止めたようで、その後上昇し帝人株を保有することに成功した当の財界グループはこの出来事で利益を得ることが出来ました。財界グループの関係者の方たち、儲けることが出来て良かったですね!で話は終わりませんでした。東京の新聞社「時事新報」がこの出来事を新聞紙上で批判的に取り上げ、贈収賄の疑いを世の中に広めることとなります。財界グループと台湾銀行の間の取引を仲介した鳩山一郎文部大臣は議会で追及され結果的には文部大臣を辞任しています。また、他の仲介者である大蔵省次官や銀行業界を担当する大蔵省の役人を始め帝人株の買い取りに関係した様々な人たちがたくさん起訴されてしまうことになってしまいました。

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斎藤実内閣への影響

上でも書きましたが鳩山一郎文部大臣が帝人株の仲介をしたわけですがその件で議会において追及され大臣を辞職しました。それだけでも当時日本の政治のかじ取りをしていた斎藤内閣に影響が出たと言えますが、その前に三土忠造鉄道大臣が偽証罪の疑いですでに起訴されていました。この事件とは別に体調の悪化を理由に陸軍大臣が辞めるなどの出来事も重なったそうです。結局1934年の7月に綱紀上の責任、日本政府の規律を結果的に乱してしまった責任を理由に斎藤内閣は総辞職してしまうこととなりました。斎藤実さんは海軍出身の人物でした。

事件のその後

帝人株の買い取りに関係した人たちなど多くの人が逮捕、起訴されましたが、裁判の結果は逮捕、起訴された人たち全員が無罪となっています。贈収賄の事実は無かったと裁判所で判断されました。大騒ぎとなった割には犯罪行為が存在しなかったということで、この事件について疑問を持った人々によって様々な憶測がささやかれることとなりました。その憶測の中には斎藤内閣に対し恨みを持っていた平沼騏一郎という人が内閣を倒したがっていた右翼勢力や軍関係者と連携し大臣から逮捕者を出して内閣の印象を悪化させ斎藤内閣を退陣させるよう謀った、といったものもあったそうです。平沼という人は検事総長や大審院長といった司法の世界での重職を担当したという経歴を持っていた人で、その業界では強い影響力があったようです。この平沼という人は枢密院(すうみついん 天皇の諮問機関、天皇から助言を求められた際にしかるべき意見を天皇に申し上げる機関です)の副議長だったのですが、前の枢密院議長が退任した後に平沼さんが議長に就任するという話を元老の西園寺公望さんや斎藤内閣に邪魔されたということで恨んでいたなどという指摘があるようです。

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今回は1934年に世の中を騒がせることになった帝人事件を取りあげてみました。結果的には逮捕者が全員無罪になった事例で当時の政権が総辞職をしてしまうことになったという妙な展開になったということと、聞き捨てならない憶測が現代においてもまことしやかにささやかれている出来事ということで調べてみようと考えました。この出来事は政財界というものは汚職によって腐敗している、という大変悪いイメージを世間に持たせてしまうとても残念な結果になりました。このような政界、財界への批判的な見方は後の反乱事件2・26事件につながったという指摘もあるようですからただの贈収賄事件などでは片づけられない重大な話のようにも感じます。斎藤内閣を倒したい勢力が火の無い所に滅茶苦茶な煙を立てたということなのでしょうかね。以前取りあげた贈収賄事件、ジーメンス事件が騒がれる結果となったのも確か山本権兵衛内閣を倒したいと考えていた勢力による策謀が原因だったという話があったような気がします。確かなところはわかりませんが。このような贈収賄疑惑から時の内閣を守るには一体どうしたらいいのでしょうね。もし日本国民にとって有益な内閣が、いずこかの勢力の策謀によってでっち上げられた疑惑事件で倒されてしまったら大変な損失です。

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

汚職事件で海軍出身の首相の内閣が退陣した別の話「山本権兵衛内閣の時に起きたジーメンス事件(シーメンス事件)とは」はこちらです。

政府が企業に便宜を図って民間から批判された話「開拓使官有物払い下げ事件を簡単に。大隈さんの関わりも」はこちらです。

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