世界遺産登録に反対する意見が出る理由は何なのでしょう

世界遺産登録に反対する理由

世の中のニュースで取り上げられる話題に関心を持たれたり、世界遺産に関係した話に関心を持たれてこのページに来られた皆様、こんにちは!この記事では国際機関によって指定されている、いわゆる「世界遺産 せかいいさん」として自国の建築物や記念物、自然環境が登録されることについて、反対意見が出てしまう理由は何なのか自分なりに書いてみたいと思います。世界遺産というのは国連の一機関、国際連合教育科学文化機関、よくユネスコと呼ばれている機関ですが、この機関で採択された条約、世界遺産条約に基づいて一定の基準が満たされた場合に登録される自然や建築物、記念物などのことを言います。現在、この世界遺産条約を190以上の国々が締結しています。この世界遺産条約が採択されたのは非常に価値があると考えられる自然環境や歴史、芸術、学術といった点から見て大変貴重な建築物や記念物などを損傷、破壊から守るためだったそうです。きっかけは1950年代半ばのエジプトでの出来事にさかのぼります。エジプトには歴史的に貴重な出土品、遺跡がたくさんあることは有名ですが、その中の一つにエジプト南部に存在するヌビア遺跡があります。古代エジプトの文明に関する遺跡なのだそうですが、この遺跡、一時はエジプト政府の開発事業によって破壊される危機にさらされました。有名なアスワンハイダムの建設によって遺跡が存在する一帯が水没してしまうこととなったのです。ユネスコはエジプト政府の政策に介入し遺跡をダムの影響を受けない場所に移動するまで開発事業を進めないよう働きかけ、政府側も了承し遺跡は元の場所から移動せざるを得なかったのですが破壊自体は免れることとなりました。こうした出来事から1970年代に世界遺産条約を採択して貴重な事物を保全しようという動きにつながることとなりました。日本国も条約に入っており、現在では国内の複数の地域、建築物が世界遺産として登録されております。我が国も関係している世界遺産ですが、この遺産に登録されることについて反対の意見も出ているようです。保全目的の遺産登録にどうして反対意見が出てくるのでしょう。遺産に登録されるということは必ずしも良いことばかりではないようで、経済的な反対理由環境の変化を理由にした反対など様々あるようです。

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経済的な理由

世界遺産に登録された場合、よくその世界遺産が存在する自治体の関係者の方々が大変喜んでいる姿をテレビで見かけます。もちろん地元の自然、あるいは建築物が世界的に評価されたということは誇らしいことですし、地元の人としては素直にうれしいという思いもあることでしょう。ただその他にもうれしくなる理由が存在するようです。これはよく指摘されることですが世界遺産として登録されることによって、その自然なり建築物の存在が世界中の人々に更に知られるきっかけとなります。それによって国内外からその世界遺産を間近で目にしたいという旅行者が世界遺産を目的に集まってきます。それによって地元に観光収入が入ってくることにもつながるので、世界遺産の存在する自治体の景気が良くなる、経済が活性化されることも期待出来るわけです。実際、1993年に世界遺産に登録された白神山地の場合、登録以前の4年間は観光客数が10万人台だったそうですが、登録後はどんどん増加、1998年には57万人もの人々が観光で訪れたのだそうです(一方1993年に登録された法隆寺のように登録後むしろ観光客が減少している事例もありますが)。そのため登録によって経済的に潤うことが期待されるのにもかかわらず、なぜ経済的な理由から登録反対という意見が出るのでしょう。実は経済的な利益が得られるという一方で、世界遺産登録はその自然や建築物などの保全が本来の目的であるため、遺産が存在する地域に対し遺産が破壊されないような対応がユネスコや国から求められてくることになります。その要求に応じるためには保全のための設備を整えなければならなくなることもありますし、設備だけに限らず人材の確保もしなければならない場合もあります。そうなりますと設備、人材確保はタダで出来るわけはありませんから新たな費用が必要になってきます。ユネスコが中心となって世界遺産登録をおこなうのですから、この国際機関から遺産保全のお金が補助されそうにも感じますが、実際のところユネスコはそのような金銭の補助をするわけではなく、遺産の存在する国々に具体的な保全活動の資金負担は任されているのです。登録以前に比べ保全に対する取り組みがより厳格となって遺産の維持にかかる費用(保護費、維持費)が増加した場合、公的なお金の拠出が増加することも当然あるわけで自治体の財政に負担となることも考えられます。負担するのは政府だけではありません。都道県、市町村といった自治体も負担することになるのです。財政的に余裕のある自治体は良いかもしれませんが、そういった自治体ばかりとは限りません。

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環境の変化

地元の有名な自然、建築物が世界遺産登録されると、国際的に有名な場所となり、訪れる人の数が増えることが期待されるという話は先程いたしました。実は確かにこれによって観光収入が増えることになるのですが、その反面喜ばしくない現象が発生することもあります。訪れる人が増えれば、当然移動する人の数が増えることになりますので道路が混みあう、渋滞するといったことも起こることが予想されます。道路に限らず、遺産の存在場所に行く際に利用されることとなる交通機関についても同じようなことが言えます。白川郷の場合のように、付近に高速道路が敷設されることによって利便性が高まる場合もありますが、どの事例もそうだというわけではありません。また、交通量が多くなることともかかわってきますが、訪れる人が増えますと、自ずと駐車場の需要も増えることになります。その需要に応えることで利益が得られますから、遺産周辺に駐車場が増えることとなります。また訪れる人が増えることで日用品、飲食の需要も増えることになりますので、コンビニエンスストアのような小売店の出店が増えることにもつながる可能性はあります。駐車場や小売店。確かに訪れる人の立場に立てば利便性は高まります。しかし度を過ぎると、その地域のせっかくの見た目、景観が損なわれてしまうことにもなりかねません。景観が損なわれるという点では観光客が訪れることによってどうしてもそれ以前と比べて強まることになるであろう騒音やゴミの不適切な処理による散らかしの増加といったことはよく指摘されていることです。保全が目的の遺産登録によって観光化が進み本来の趣旨とは逆の状況を招きかねません。こうした観光化が進んでしまうことで遺産の価値が低下したと受け止め、行ってみたい対象から外す人も出てくることでしょう。交通状況の変化、観光公害、駐車場経営の増加などといった地域産業の変化、このような遺産周辺の環境の変化が遺産登録によって必ず引き起こされるとは言い切れません。しかし過去に登録された遺産の場合、そのような問題は発生していることもありますので登録反対の理由には当然なり得ます。その他、これは登録反対の理由とは少しズレますが、遺産としての登録をしてもらうよう地域で推進するかどうかで地域の人々の意見が二分されてしまうこととなり、住民間で対立が生じてしまうという問題もあります。

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今回は地域の自然や建築物などがユネスコの世界遺産として登録されることについて反対意見が出る理由を一部取り上げました。国内で大企業がスポンサーをしている世界遺産のテレビ番組は何年前から始まったのでしょう。現在も続いておりますので、きっと視聴率が安定しているのでしょうね。そしてよく番組のネタが尽きないなぁと今回の記事を作っていて感じました。それだけ世界遺産登録された自然や建物というのは世界中にたくさんあるということになります。今回世界遺産の話題に関する記事を作成したのは歴史に関する記事を作っている中で、何かテーマになる話題はあるだろうかとあれこれ考えて、日本の第十六代天皇である仁徳天皇については記事にできるか調べていたことがきっかけでした。仁徳天皇陵を含む古墳群が令和元年(2019年)に世界文化遺産に登録されることが決定しました。はずかしいことに私はすっかりそのような出来事があったことを忘れてしまっていましたが、この決定について反対意見があるということを今回知ることとなりました。世界遺産登録なんて、地元の人はみんな大喜びなのだろうと勝手に想像していましたが、そういう単純な話でもないようです。仁徳天皇陵にどれくらい近づけるものなのか私はよくわかりませんが、歴代天皇のお墓が観光地化するようなことになると、何と言いますか、漠然とではあるものの違和感を持ってしまいます。葬られている人の立場になった場合観光客が増えることについてどう感じるのか。もう亡くなられているわけですし具体的に意見を聞くことも出来ません。観光客が厳粛な態度でその場に行くのならまだいいかもしれませんが、ゴミを散らかすようなことになるとさすがに嫌に感じそうなものです。保全を目的として世界遺産という評価をおこない登録するという仕組みについては保全が目的ならそんなに悪いことでもないように思うのですが、現実が目的とかけ離れてしまうような場合が増えると、反対意見は今後強まるのかもしれません。観光地化という経済的なうまみを得られなくするような規制をユネスコが設定したら問題の一部は解決するかもしれませんが、そうなるとどこの国も「ぜひ我が国の~を世界遺産に!!!」なんて言わなくなるのかもしれませんし。規制の仕方も程度問題なんですかね。

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

今回の記事では写真ACで提供されている画像を使用させていただいております。

国際的な催しに関して触れている話「万博開催にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょう」はこちらです。

国連という機関について触れている話「国連加盟の一部の国々に拒否権がある理由は何なのでしょう」はこちらです。

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