故事成語「黔驢の技」の読み方と意味、由来の話について

故事成語「黔驢の技」の読み方

 

「黔驢の技」は「けんろのぎ」と読みます。「黔驢」を「けんろ」と読むのははたして常識なのでしょうか。「黔驢の技」が故事成語である以上有名な言い回しではあるのでしょうけれど。私は「黔驢」を「けんろ」と読むとは、いつもの通り全く知りませんでした。技「ぎ」はただの音読みですから読めますけれど。

 

「黔驢の技」の意味

 

「黔驢の技」には「自分の能力が思っているほどではないことをよく理解していないことで恥ずかしい思いをする」という意味があるそうです。他には「うわべは良いものの実際のところは価値が低い」という意味もあるようです。故事成語の「牛首を懸けて馬肉を売る」と一部意味が重なりますね。

黔驢の「黔」というのは中国大陸の地名(現在の中国貴州省あたりのようです。中国大陸の内陸部です)を意味しているそうで、「驢」は馬に似た動物、ロバのことを意味しています。

 

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故事成語「黔驢の技」の由来となった話

 

大昔中国大陸にあった唐という国の柳宗元(りゅうそうげん)という人が関わっている書物「柳河東集」という書物の中に由来となった話が掲載されています。書き下し文を私なりの言葉で現在の表現にしたものを以下に書いていきます。誤った所があるかと思いますがご了承ください。

 

中国大陸の黔(けん)という地域にロバは生息していません。ある人物がおりまして、その人は変わったものが好みでした。ロバを船に乗せて自分の地元に連れてきてしまいました。しかしせっかくロバを連れてきたのですが、その連れてきたロバを利用する方法がありませんでした。そのためロバを山のふもとで捨ててしまいました。

この地域には虎がおり、うろついていたある虎がロバを見つけました。虎からするとロバは豊かでむっくりとしていて大変大きく見えました。そのため虎はロバのことを神様だと思いました。

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虎が林の間に隠れてロバの様子を見て、少し前に進んでロバに近づいてみると慎み深い様子で虎もロバもお互いよくわからない様でした。

また別のある日、ロバが一度鳴いたところ、近くにいた虎は大変驚き遠くへ逃げて行きました。虎はそのことを、虎である自分をあの動物が噛もうとしたのだろうと思いました。ですから虎は大変恐れました。

しかしその後行ったり来たりしてロバを見ていても大した能力を持った動物ではないようにも見えました。虎はロバが出す鳴き声にも次第に慣れました。虎がロバの近くに行きロバの前や後ろに位置してもロバは虎を襲う様子がありません。

更に近づいてロバの様子にますます慣れていき、揺れ動いて、もたれかかったり体当たりしてみました。ロバは我慢できなくなり怒って虎を蹴りました。このことで虎は喜び、ロバについて大体の見当をつけて「ロバはさっきみたいに蹴ることくらいしか出来ないな。」と言いました。虎はロバめがけて飛びあがり大きく吠え、ロバの喉を噛み切り、ロバを食べてその場を去って行きました。

あーあ。その姿は大きく、さも大した存在のように見え、その鳴き声は大きく広がり非常に手ごわそうに見えたのです。もしロバが虎を蹴るようなことをして、自分の能力をさらけ出すようなことがなければ、いかに虎が強いと言っても「あの動物(ロバのこと)ってすごく強いんじゃないだろうか。」と疑い、怖がって最終的にロバを襲って食べることはなかったでしょう。でも残念ながら現実にはロバが自分の能力をさらけ出したことで虎に襲われ食べられてしまいました。悲しいですねぇ。

 

以上が「柳河東集」に掲載されているこの故事成語に関連したお話の内容となります。

 

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今回は故事成語「黔驢の技」を取りあげてみました。この故事成語を取りあげた理由も故事成語誕生のきっかけとなった由来の話が興味深いなと感じたからです。この話の結末は作者も嘆いている通り悲しいものではあるのですが。

「黔驢の技」というのは結局ロバが怒った時に虎に向かって繰り出した「蹴り」のことなんですね。でも虎にとっては何も怖くはない攻撃だったことで、「せいぜいあの動物(ロバのこと)が攻撃してもその程度か」と虎がロバをあなどってしまう原因となり、ロバがひどい目に遭ってしまいます。作者は技を出さなければ虎の餌食にはならなかったのにと嘆きましたが、技を見せないで遠ざかればよかったということでしょうかね。

教訓としては「例え自信を持っている分野があったとしても、それほど大したことはないと思っておいたほうが身のためですよ。」ということになるでしょうか。心の中で自信を持つのは全然悪いことではないのでしょうが、外向けにどう振る舞うかが問題になってくるんでしょうね。自慢げに発言した内容が誤っていると本当に恥ずかしいでしょうし。知っておいて損のない言葉だなと思いました。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

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