安保法制が合憲だと主張される理由は何なのでしょう

安保法制が合憲だとする理由

 

西暦2015年(平成27年)の9月に安保法制(あんぽほおうせい)と呼ばれる安全保障分野に関わる複数の法律内容の変更と新たな法律の成立が国会でおこなわれました。政府与党と野党の間でこの法整備を巡って意見が激しく衝突しましたが、よく行われた議論の一つに安保法制は違憲、憲法違反だという意見と安保法制は合憲、憲法に違反していないという意見の対立があります。前回の記事では安保法制が違憲だと指摘される理由について取りあげてみました。集団的自衛権を日本国憲法は認めていないなどの理由から違憲と主張されることが多いようです。違憲だとする主張のみ取り上げるのも不公平かと思いますので今回は安保法制が合憲だとする理由を見てみたいと思います。同じ年、2015年の6月に衆議院でおこなわれた憲法審査会で複数の政党が推薦する憲法の専門家、3名が全員議論されている安保法制の内容は憲法違反ですという立場をとり、当時大変話題になりました。しかし安保法制が合憲だとする立場の専門家もいるようです。違憲の立場の人たちは安保法制が集団的自衛権も行使する内容となっているので、集団的自衛権を認めていない日本国憲法に違反していると主張することが多いです。しかし合憲の立場の人たちは日本国憲法が集団的自衛権を否定してはいないという立場に立っています。否定しているわけではないのだから安保法制は憲法違反などではない、合憲だというわけですね。

 

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集団的自衛権の行使が憲法違反ではないという理由

 

集団的自衛権については前回の記事に記載した内容をここで再び掲載します。~例えば日本と同盟関係を結んでいるような非常に関係の強い国(仮に「あ」という国だとします)に対してどこかの国(仮に「い」という国だとします)が武力攻撃したとします。「あ」に対する攻撃は日本国を危険な状況にすると判断して、「あ」を攻撃した「い」に対し日本が武力行使する、そういった権利のことを集団的自衛権と言います。~こういった権利が日本国憲法でどうして否定されてないと言えるのか。これについては過去におこなわれた裁判の判例が根拠とされているようです。「砂川事件」という出来事に関する最高裁判所での裁判で1959年(昭和34年)の12月16日に判決が出されました。この時に最高裁判所は日本国憲法と自衛権について考えを示しています。日本国憲法の第9条で戦争の放棄や戦力の保持を禁止するとあるものの、この日本国憲法の内容によって我が国の固有の権利である自衛権は何も否定されていない。日本国憲法の平和主義は無防備や無抵抗を義務付けるものではないといった内容が述べられたのだそうです。この判決の中に出てくる言葉、自衛権には当然集団的自衛権も含まれているわけですから、最高裁判所の解釈によれば集団的自衛権が日本国憲法によって認められていることになる。以上のような事を理由に集団的自衛権の行使も含む安保法制は合憲だと主張されることが多いようです。これは安保法制の法案を国会に提出した安倍政権も採用している根拠のようで、政府や国会を法的に拘束する憲法解釈の一つが裁判所の判断なので過去の最高裁判所のこのような判断が持ち出されるんですね。

 

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憲法に関する政府解釈の変更

 

またこれまでの政権の憲法解釈の内容を変更するのはいけないという考えに対しても、憲法の内容というのは完全無欠なものではなく、憲法が作られた当時、想定されていない状況が新たに発生することも十分あり得る。そういった憲法が想定していない新たな状況に対応するために時の政権が憲法解釈を変更することは当然認められるべきだといった意見もあるようです。日本国憲法が施行されたのは1947年。日本国が国際連合に加盟したのは1956年でした。国際連合は加盟国に自衛権を認めています。この自衛権の中には集団的自衛権も含まれており、このような事態を日本国憲法が作られた当初想定されていたわけではありませんでした。明確に日本国憲法で集団的自衛権の行使を禁止するという条文がそれ以降付け加えられたわけでもありません。国際連合に加盟するという新たな状況にいたり、憲法解釈を変更するのは妥当だ、そういった主張もあるようです。

 

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今回は安保法制が合憲だという立場について取りあげました。前回の記事と今回の記事、主に集団的自衛権が憲法上どうなのかということを中心に書いています。安保法制について議論になっている他のテーマもあるかと思いますが、個人的に抱えることの出来る話に限度があるので、不満に感じられた方がおられましたらご容赦ください。安保法制の何が問題視されているのかについては以前ニュースで頻繁にこの話題が扱われていた頃、報道を見聞きしていてもあまりよくわからなかったこともありますし、2015年当時大変世の中が騒いでいた話でもありましたので取り扱ってみました。憲法第9条の文面を見ると憲第1項に(ここからは憲法の引用になります)「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」(ここまで憲法の引用になります)、第2項に(ここからは憲法の引用になります)「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」(ここまで憲法の引用になります)とあります。この文章を読んで武力行使を永久に放棄するんだから自衛権の行使なんて認めてないじゃないかと解釈する人は結構いそうな気がします。出来れば法律の分野に詳しくない人が憲法の条文を読んでも矛盾を感じない内容に憲法を改正するのが望ましいのだろうなぁと個人的には思ってしまいます。日本社会を存続していくためには新しい状況に適応していかなければならないという意見がありますが、それについては個人的には否定しようもないことだと思います。日本社会が無防備、無抵抗を決め込めば他国が日本に対する侵略の意図を持つことはない、と保証できる人などいるはずもありませんし、周辺国との摩擦は確かに存在しますから。このサイトでも尖閣諸島に関連する話は取りあげておりますので、やはりそういった過去の出来事が頭に浮かんできます。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

今回の記事と反対の主張について触れている記事「安保法制が違憲だと批判される理由は何なのでしょう」はこちらです。

日本の憲法を変更した出来事について触れている話「大日本帝国憲法を改正することになった理由は何なのでしょう」はこちらです。

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