治安維持法とは?この法律が制定された理由や影響について
治安維持法とは
治安維持法(ちあんいじほう)とは西暦1925年(大正14年)に日本で成立した法律です。名前の通り日本社会の治安、日本社会が穏やかで秩序が守られた状態のまま維持されることを目的とした法律です。1925年に出来たこの法律には国体を変革、または私有財産制度を否認することを目的として結社を組織したりそのような結社に参加した人は10年以下の懲役か禁固の刑罰が科せられることとなっています。国体を変革しというのは当時の日本社会の体制を覆すような行為を指しています。ロシアで行われた皇室制度を倒すような革命行為を意味していると考えればよいのではないでしょうか。私有財産制度の否定というのは個人が財産を持つことを否定するということです。私有財産制度を否認するというのも社会主義体制を意識した表現ですね。ロシアで革命を実行した勢力はマルクス主義を信奉していましたが、この思想は、資本(事業を行うためのお金や工場などの生産設備)の個人所有を否定しそれらの資本は社会全体の財産とするという考えでした。このような考えの団体に関わると10年以下の懲役刑か禁固刑にするよ、という法律ですね。懲役刑と禁固刑ですが懲役刑は刑務所内で作業をさせられる刑罰で禁固刑は刑務所内で作業を科せられはしないものの拘束されるという刑罰です。この法律はその後1928年と1941年に内容が変更されました。1928年の内容変更では有罪となった人に対する罰則を重くしました。これまでは懲役か禁固でしたが、最も重い罰則を「死刑」とすることにしています。そして危険な団体を作ったり加入していなくてもそのような団体の目的を果たすため、何らかの行為を行った人も罰するということになりました。1941年に行われた法律の内容変更については上で書いたような、革命を起こしたり財産の個人所有を否定することを目的とした団体を支援したり、そのような団体を作る準備をするための団体を作ることを禁止するという内容が盛り込まれ、取り締まる側が法律にあるような行為を準備していると判断した場合には準備していると見なされた人たちを逮捕できるような内容となりました。法律が内容変更されるにつれて、取り締まる対象が広範囲になり罰則が厳しくなっていきました。
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法律が制定された理由
法律を作った目的である日本社会の治安を守るためということはもちろん理由となりますが、当時の事情としては日本がソビエト社会主義共和国連邦(社会主義革命がおこなわれたロシアを中心とした国々)と経済的な事情などから国交を結ぶため日ソ基本条約を結びました。この外交上の出来事によって日本国内に社会主義思想がこれまで以上に入り込んでしまう危険性があると政府は心配していました。また1925年に衆議院議員選挙法が改正されました。普通選挙法のことです。この選挙制度を導入することに反対していた諮問機関(天皇から政治に関する意見を求められた時に回答を申し上げる部門のことです)、枢密院(すうみついん)に対し納得してもらうためこのような法律を作ったという指摘もあるようです。枢密院はこの普通選挙法によって大衆による政治運動が激しくなることを心配していたようです。このように本来の治安維持の目的の他にもいくつか当時ならではの事情があったようです。
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治安維持法が制定された影響
この法律が出来たことで社会主義者、共産主義者、無政府主義者が日本社会で好きなように活動して革命が実現するということにはなりませんでしたが、そのような思想を信奉しているわけではない宗教関係者や日本政府の方針に反対する言論活動をする人々も取り締まり対象となっていきます。私有財産制度を当然認め、日本の皇室制度を打倒しようなどと考えていない自由主義者の人たちも当時の日本政府の方針を批判したら治安当局に逮捕されてしまうようになってしまいました。当初の法律制定目的とはかけ離れた法律の運用が行われてしまったようです。正確な数字と言えるか判断が難しいのですが、この法律で逮捕された人は当時の司法省の報告で6万7000人くらいのようです。しかし数十万人逮捕されたとか、獄中で死亡した人は400人以上いたという指摘もあるようです。
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今回は治安維持法について取りあげてみました。1925年に普通選挙法が出来たという記事を先日作りましたが、それと同時に治安維持法も出来ましたとよく並列して言われる出来事ですし、後に日本社会をかなりゆがめることにつながったという指摘もある法律ですので調べてみることにしました。日本の体制を破壊して社会主義革命を実行に移されたら多くの人が被害に遭ってしまいますからこの法律を作った動機については個人的に反対出来ないなと調べていて感じはしましたが、途中から社会主義者や共産主義者とは異なる立場で政府方針に反対する人を取り締まることにもこの法律が利用されたことについてはやりすぎだろうとも思います。こんなことがまかり通ると、まともな政策議論を民間レベルで行えなくなって民主政治の利点が全く生かされなくなってしまうのではないでしょうか。一般国民もまともな情報を手に入れたり、まともな議論を聞いたり知ったりすることが出来ずに選挙で投票しなければならなくなります。これは民意がゆがんでしまうでしょうし、その結果政治もゆがんでしまうでしょうね。この法律の運用に問題があると受け止めてこの法律をより正しい内容に変更しようとした国会内の動きってなかったんでしょうか。こういう時にこそ衆議院議員は結束して対応しなければならないんじゃないでしょうかね。このような治安に関係した法律制定の意図は妥当だとしても、内容の変更や運用の仕方には十分な慎重さが要求されるものなのだなと記事を作っていて強く感じました。
今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。 <(_ _)>
※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。
この法律の誕生に関連する記事「日ソ基本条約の内容は?締結された背景や双方の全権についても」はこちらです。
この法律で逮捕された人たちに関連する記事「転向とは?一部共産党員の動きや国家社会主義についても」はこちらです。
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