保安隊が起こした通州事件とは?日本軍の対応についても
通州事件とは
通州事件(つうしゅうじけん)とは西暦1937年(昭和12年)の7月29日、日本と中華民国の間で緊張が高まっていた時期なのですが、この日に中華民国の通州で発生した治安部隊の反乱事件です。通州というのは中華民国の重要都市北平(ほくへい)、現在は中華人民共和国の首都北京となっていますが、その北平の一地域にあたる場所です。当時その地域には冀東防共自治政府(きとうぼうきょうじちせいふ)という行政組織が存在していて、その組織には治安を守る保安隊(ほあんたい)が所属していました。この自治政府は日本国と比較的良好な関係にあった行政組織です。すぐ近くには中華民国の影響下にあった冀察政務委員会という行政組織があって自治政府に隣接する地域を統治していました。
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日本と良い関係にあった自治政府の治安組織である保安隊が突如自治政府に対し反乱を起こし付近に駐屯していた日本人部隊を襲撃し、自治政府が統治していた通州にいる日本人居留民に対しても壮絶な暴行をおこない、たくさんの日本人(朝鮮半島出身の人たちもたくさん含まれています)を殺害しました。この事件で日本人が200名以上殺害されたという指摘が多いようです。この事件には保安隊だけではなく中華民国国民政府の軍隊に所属する兵員たちも関わっていました。保安隊は治安維持が仕事ですから当然武器も所有しています。保安隊に所属していたのは中国の人たちでした。保安隊の責任者には反乱を主導した勢力に襲われた人もいたようです。反乱に反対したためです。自治政府の指導者は保安隊に拉致されてしまいました。この事件は日本の人たちに大変な衝撃を与え、一般日本国民の中華民国に対する感情を著しく悪化させる結果となりました。
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日本軍の対応
通州にはもともと日本陸軍の部隊が日本人保護の目的で駐留していましたし、中華民国の軍隊との戦闘も懸念されていたため事件前には別の部隊も通州に移動してきていました。ただ事件発生時にはこの通州にいた日本軍の大半が指示により北平の別地域に出動していたのだそうです。そのため通州には日本兵がそれ程残っていませんでした。自治政府の保安隊の隊員は5000人以上もいたそうで、それに対し通州に残っていた日本兵は100人余りという状況だったようです。圧倒的に不利な中、残された日本軍の兵員たちは反乱を起こした保安隊と戦いました。日本軍側の責任者はこの戦闘で命を落としたそうです。このような事態が発生しているとの連絡が入り急きょ日本軍が通州に向かいましたが到着したのは事件発生の翌日7月30日の午後で、その時には保安隊は逃亡していたそうです。日本軍は逃亡する保安隊に攻撃を加えました。事件後、この大勢の日本人が犠牲になってしまった出来事について地元の自治政府は日本側に謝罪をおこない、日本側の被害に対して賠償をおこないました。事件を起こした者たちの中で身柄が確保された人物については自治政府側が処罰したそうです。
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今回は通州事件について取りあげてみました。この出来事について戦前は日本国内のマスコミが大々的に扱っていたようですけれど、戦後に入ると長い間あまり語られることはなかった話のようです。私個人も高校の歴史の時間(遠い昔の話です)に耳にすることが全くありませんでした。しかし事件の内容を知ると日中戦争の時期に起きた出来事として無視してしまうのは適切ではないなと感じ今回記事にしています。元来この冀東防共自治政府が日本側の工作も相当あったことで誕生したそうですし、日本と友好的な組織だったわけですから、まさかその組織に所属する治安部隊が襲い掛かってくるとは想定していなかった、ということのようです。万が一ということを想定して日本軍兵員を配置すると、とてもじゃないけれど兵員の数が足りないよ、というような状況だったかもしれませんが、結果的には守備計画に盲点があったんですね。本当にいたましい事件です。尼港事件の時も思いましたが経済的な理由で日本本土を離れるのは仕方がないとしても最悪の場合このような残酷な事態に巻き込まれてしまうこともありえるわけですし、このような被害に遭うことの無いよう他国に住む日本国民の方々には十分注意をしてもらいたいと思います。そういった注意喚起の意味でも尼港事件や通州事件はもっと日本国民が知っておいた方がよい歴史事実なのではないでしょうか。
今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。 <(_ _)>
※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。
国外で邦人が被害に遭った他の出来事に触れている話「済南事件(さいなんじけん)とは?この事件の原因についても」はこちらです。
国外で邦人が被害に遭った他の出来事に触れている話「尼港事件(にこうじけん)とは?この事件への報復についても」はこちらです。
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