日韓基本条約の締結と慰安婦問題にまつわる請求権の関係は?

条約と請求権の関係は

 

西暦1965年(昭和40年)に日本国と大韓民国との間で日韓基本条約が締結されました。お互いの利益や平和を維持するため両国が協力しようと最初にうたわれているこの条約の主な内容は1910年以前に結ばれた条約を無効とし、韓国が朝鮮半島のただ一つの合法的な国であるということを日本が認め、国交を開くといったものでした。この基本条約の中では二国間での請求権については触れられていません。ただこの条約が結ばれた時に別の約束も二国間で複数結ばれています。日韓基本条約の付随協約(ふずいきょうやく)などと呼ばれています。基本条約とセットになっている約束事ということのようです。その付随協約の中に「日韓請求権並びに経済協力協定」と呼ばれる約束事もありました。「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」というのが正式な名称ですが、これだけ長いといちいち言っていられませんよね・・・。とにかくそのような協定、約束事も日韓基本条約と一緒に結ばれています。この協定はどのような内容なのかというと、日本が韓国に経済的に協力をしますよということ、1945年8月15日以前の、つまり終戦する以前の国や国民の財産や利益、請求権に関する問題が完全に、最終的に解決されたことにすること、この約束事に関係する日韓両国の争いごとは外交手段で解決することにして、二国間での外交で解決が難しいなら他の中立的な立場の国が関係する仲裁委員会の決定に従うことといったものです。この二国間での請求権の問題という所が慰安婦問題に関連した請求権と関わってくるようです。

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この「日韓請求権並びに経済協力協定」が日韓両国によって締結されたことによって韓国側は日本に対し、日本側は韓国に対し、1945年8月15日以前に起きた出来事を理由にするすべての請求権を主張しません、ということをお互いが認めました。日本政府はこの協定が結ばれていることを理由にいわゆる従軍慰安婦の補償の問題に関しては解決しているという立場をとっています。慰安婦問題に関連して韓国側が補償を日本に対し請求する権利はないと日本側は考えている、ということですね。まとめますと、日韓基本条約とセットになって締結された請求権に関する協定、約束事が二国間の1945年8月15日以前の出来事に関する財産や利益、請求権の問題を全て解決したことにするという内容となっていました。その協定が結ばれたことで1945年8月15日以前に関することを理由にした要求はもうしない、出来ないという枠組みになっています。韓国もそれを認めたため1965年にこの協定は成立しました。いわゆる従軍慰安婦の話は時期的に考えれば当然1945年8月15日以前の出来事ということになるため、この協定に含まれる話ということになります。

 

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韓国国内の請求権協定に関する反応

 

基本条約が結ばれた時日本でも韓国でも反対する運動がおこりました。韓国では請求権に関してそのような譲歩を日本に対しするべきではないという主張が強かったようです。その後かなり時代が経過した2012年。韓国の最高裁判所にあたる大法院というところが日本のおこなった人道に反する行為に関する個人の損害賠償請求権は日韓の請求権協定が存在していても有効だという判断をしたそうです。また韓国政府も2015年に日韓両国間で慰安婦問題の合意がされる以前は元慰安婦の個人的な賠償の請求をする権利については1965年の請求権協定による解決の例外だという立場を表明していたのだそうです。慰安婦問題の請求権は1965年に結んだ請求権協定に縛られないよと言っていたわけですね。

 

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今回は日韓基本条約について一部取りあげました。基本条約の締結は1960年代の出来事の中でも重要な話だと思いますが、基本条約の中身よりもむしろその時一緒に結んだ協定のほうが最近はむしろよく取り上げられているような気もします。基本条約に関連した記事を作りたいなと思ったのですが、やはり二国間の補償や賠償に関する対立がたびたび注目されていますので今回のようなテーマの記事にしてみました。慰安婦問題は世の中で時々取り上げられますが、その問題は既に解決済みという日本側の意見をこれまで耳にすることがありました。その時はどういうことなのかよくわかりませんでしたけれど、基本条約と一緒に締結された協定がある、だからその協定が結ばれたことによってもう解決したことになったのですよ、という考え方なのだということを今回の記事を作っていて理解することが出来ました。確かに協定を見てみると1945年8月15日以前の内容に関する請求権の問題は解決したことにするといった内容が書かれているので素直に読めばそれ以前の話はもう持ち出さないということでお互いが納得していることのように感じます。こんな協定があっても韓国側が例外などと言って慰安婦問題を持ち出してくるのは韓国国内の反発が相当強いからなのでしょうか。2015年の慰安婦問題合意が成立した後も韓国側が慰安婦問題を持ち出して日本を批判するというようなことが続くなら国家間の約束って一体何なのだろうという気がしてしまいます。請求権の協定の中には日韓の外交で解決しないときは第三国の関わる仲裁委員会を開いて解決するような内容も書かれています。もし仲裁委員会で解決しようとしても結局解決しませんでした、なんていうこともあり得るんでしょうかね。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

大韓帝国の併合について触れている話「韓国併合とは?併合の理由や韓国併合条約の内容についても」はこちらです。

維新後の日本と李氏朝鮮の関係に触れている話「征韓論とは?征韓論が強まった背景や反対側の理由について」はこちらです。

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