介護保険法を制定した背景には何があったのでしょう

介護保険法が制定された背景

 

西暦1997年(平成9年)の12月7日に介護保険法という法律が公布(こうふ)されました。公布というのは、こういう規則が出来ましたよと国が世の中に知らせる行為です。この介護保険法という法律は介護保険制度という新しい仕組みを作って介護が必要な人にサービスを提供するため、必要な内容を定めています。どういった方が介護の必要な方なのか、介護を支援する専門職「介護支援専門員」とはどのような存在か、提供する個別の介護サービスがどのようなものなのかなど様々な項目に関する定義を定めてもいます。1997年にこのような法律が公布された背景とは何だったのでしょう。この法律によって新しく導入された介護保険制度というものはそれまでに存在していたいくつかの問題に対応するため作られたようです。いくつかの問題として日本社会の中で高齢者の方々の占める割合が増加するという、いわゆる「高齢化」によって国や自治体などの公的な機関の台所事情が厳しくなったこと、徐々に介護する環境が変化してきたこと、介護を提供する施設が少なかったこと、といったものが挙げられます。

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高齢化で公的機関の台所事情が厳しくなったことについてですが、人は年を取ると病気を抱えることも増えてきます。若かったころとは違いますから普段の生活を送るにも手伝いが必要になってくる場合も出てきます。そういった介助が必要な方に対する公的なサービスは以前から存在してはいました。しかし高齢者の方々が増加すると、それに伴って介助が必要な方々も自ずと増えていきます。それまでの仕組みでは介助のサービスのために公的機関がまわすことの出来るお金に限界があり、増加する高齢者の介助サービスの需要に対応するのが難しくなっていきました。そのため新たな介護保険制度では国民から介護サービスに使うためのお金を介護保険料として徴収することとしました。それまでは医療保険として集められていたお金を財源に介護サービスがおこなわれていたのだそうです。

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また、従来は人が高齢になると身内の方々、ご家族が介助、お世話するというのが一般的でしたが、家族の在り方も変化し、身内の方々が介助して対応するということが難しくなっていました。そもそも介助してくれる身内の方がいないとか、皆仕事に出ていて介助しにくい環境だとか、介助する立場の方も高齢のため非常に負担が大きくなってしまう、等々家族内での介助に期待するのが難しい世の中になって来ていたため社会全体で高齢者の介助をしていく必要が出てきていました。介護を提供する施設が少ないということについてですが、高齢者の方々が介護サービスを受けることの出来る施設が少ないことでサービスを利用できない高齢者の方々が存在していました。本当は介護が必要だけれども、そういったサービスを提供してくれる施設が身近にないために、病気、怪我の療養で医療機関に入院されていた高齢者の方々がなかなか退院できず入院期間がズルズルと伸びてしまうという社会的入院が当時はとても多かったそうです。この社会的入院は国が負担する医療費の増加に相当影響していたと言われています。医療費の増加を抑えるためにも治療が終了したら速やかに医療機関を退院し介護サービスを提供する施設に移ることが出来るような仕組みが求められていました。需要に対応できるようサービスを供給できる施設を増やす必要があったわけです。

 

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今回は介護保険法の制定に関して一部取りあげました。高齢の方々が短期間に増加するという日本社会の特徴が大変影響している動きですし、国民の負担が介護保険料という形で増える結果にもなり、多くの国民に関わっている話なので調べてみようと思いました。以前1989年に消費税を導入した時や1997年に消費税を5%に増税した時のことを記事にしましたが、その時には記事を作る過程で高齢化社会に対応するための財源として必要なので消費税を導入するあるいは増税するという政府側の説明を目にしました。しかしこのような介護保険制度が導入されたということは消費税による税収増だけではとても高齢化に対応できないということを示しているような気がします。介護保険料が少しづつ増えているという話はよく聞きますし、消費税もその後さらに8%に増税されました。社会の高齢化というのは国民の負担を増やしていくものなのですね。ただ理由が理由なので負担する国民側もやむを得ない出費ということでお金を出しており、今のところ国民の不満が爆発するというようなことも無く、介護保険制度は機能し続けています。高齢化社会の傾向は2040年代まで続いていくという意見もあるのだそうです。国民の経済的な負担を増やすと言っても限度があるような気がします。国民一人一人の負担をこれ以上増やさずに介護サービスの水準を維持するような方法って無いのでしょうかね。そんなことを考えるのは虫が良すぎるのでしょうか。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

休暇に関する出来事について触れている話「公務員の方々の完全週休2日制はいつから始まったのでしょう」はこちらです。

高齢化が関わっている他の話「竹下内閣が消費税を導入した理由は何だったのでしょう」はこちらです。

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