故事成語「尾を塗中に曳く」の読み方や意味、由来について

「尾を塗中に曳く」の読み方

 

故事成語「尾を塗中に曳く」は「おをとちゅうにひく」と読みます。「尾」は普通に読めるところですが、「塗中」や「曳く」は私にとってなかなか難しい所でした。あまり普段目にする文章に出てこない言葉ですね。

 

「尾を塗中に曳く」の意味

 

「尾を塗中に曳く」の文字通りの意味としては「尻尾を泥の中で引く」ということになります。「塗」という字は「泥」という意味を含む字なんですね。文字通りの意味はそうなりますが、この故事成語は「待遇の良い位の高い立場におさまってしがらみで不自由な思いをして生きていくよりも、例えそれ程裕福ではなくても自由に生きていける方がいい」という意味になります。亀が泥の中を尻尾を引いて歩く様子を、あまり良い環境ではないものの自由に生きている、と考えてそのように例えているわけですね。

 

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「尾を塗中に曳く」の由来

 

この故事成語が誕生するきっかけとなった話は中国の古典「荘子」(「そうじ」と読むことが多いそうですが「そうし」でも誤りではないようです)の秋水篇の中にあります。書き下し文になったものを私なりに現在の言葉で以下に表現してみます。誤ったところがあるかと思いますがご了承ください。

 

荘子さんがある時濮水(ぼくすい)という場所で釣りをされていました。当時存在した「楚」という国の王様が国の偉い役人さんを二人、荘子さんのもとへ向かわせました。荘子さんのもとを訪れた偉いお役人さんたちは荘子さんに「荘子様、どうか我が国で我々の為に働いてください。お願いいたします。」と言いました。

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荘子さんは釣竿を持ったままお役人さんたちのほうを向かずに言いました。「私は聞いたことがあるのですが、あなた方の国、楚には神の亀なるものがあるそうですね。その神の亀は既に死んで3000年も経過しているそうですが。楚の王様はこの神の亀を布でくるみ箱の中に入れ王様の祖先の霊を祭る建物の上に大切にしまっておいているということです。ところでこの「神の亀」と言われている亀は人に捕えられ死んだ後も骨となって残り人々から崇められることを望んだのでしょうか。それとも人に捕えられず生きて海のほとりの泥の中で尻尾を引くことを望んだでしょうか。」

荘子さんの話を聞いていた二人のお役人さん方は「捕えられて死んで神の亀と言われて人々に大切にされるよりも生きて泥の中で尻尾を引きずっていることを望んだのではないでしょうか。」と言いました。

すると荘子さんは言いました。「お行きなさい。せっかくのお誘いですが、私は今ちょうど、泥の中で尻尾を引こうとしている所なのです。」

 

以上のような話です。

 

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今回は「尾を塗中に曳く」という故事成語を取りあげてみました。これまでの人生でこの故事成語を目にしたのは今回が初めてです。取りあげてみた理由は由来となった荘子さんの話が興味深かったからです。「仕官すると色々面倒な事がございますので、お断りさせていただきます。悪しからず。」というストレートな断り方でしたら面白みに欠けるかもしれませんが、亀のたとえ話を使ってお役人さんたちを納得させる展開となります。亀にしてみれば上昇志向などあるはずもありませんから、捕まって殺されて占いに使われるよりは生きて自由でいたほうがいいに決まっていますよね。荘子さんも社会的に高い立場で窮屈な思いをするよりも目立たず自由に生きることを望んだという話でした。

世の中には色々な人がいます。社会的に見て尊敬される立場になりたいと思う人も当然いるでしょうから、荘子さんのような考え方の人だらけになってしまっては世の中が成り立たないという心配はおそらく無用なのでしょうね。日々の仕事に忙殺されるような状況ですと荘子さんのような生き方、考え方というのは魅力的に映るのではないでしょうか。このような価値観を知っておいても損は無いように感じました。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

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