モスクワオリンピックに日本が不参加を表明した理由は

モスクワオリンピック日本不参加の理由

 

モスクワオリンピックは西暦1980年(昭和55年)の7月から8月3日まで開かれていた国際的なスポーツの祭典です。この世界的な行事に日本国は不参加を表明しました。その理由はモスクワオリンピックをボイコット(自分たちの主張を実現するため拒否する行為をボイコットと言います)しようと様々な国々に呼びかけた特定の国の動きに賛成し、同調したためです。ボイコットを主張した国はアメリカでした。アメリカの呼びかけに応じてモスクワオリンピックに参加しなかった国は、アメリカはもちろんですが他にもカナダ、西ドイツ、ノルウェーといった欧米の国々や日本、韓国、台湾、中華人民共和国の北東アジアの国や地域、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニアなどの東南アジア、オセアニア地域の国々、アルゼンチン、チリ、ボリビア、パラグアイなどの南米の国々、ホンジュラス、パナマ、ハイチなどの中米の国々、南アジアのパキスタンや中東のイラン、トルコ、サウジアラビアといった地域大国、エジプトやスーダン、コンゴ、ガーナ、ソマリアなどのアフリカ大陸の国々も不参加を表明しています。その数は約50か国にものぼりました。

 

スポンサーリンク

アメリカがボイコットを呼びかけた理由

 

アメリカの当時の大統領はジミー・カーターという民主党所属の人でした。この人の政権の時にソビエト連邦は自国の軍隊に隣国のアフガニスタンを侵攻させています。1979年12月のことでした。現在のアフガニスタンの北側にある国はウズベキスタンやタジキスタン、トルクメニスタンといった国々ですが、こういった国々はソ連が崩壊する1991年までソビエト連邦の一部でした。アフガニスタンを侵攻した当時、ソ連領のすぐ南にアフガニスタンが位置していたわけです。ソ連による他国への軍事介入を批難するため、カーター政権はアフガニスタン侵攻開始の翌年におこなわれることになっていたモスクワオリンピックをボイコットしようと国際社会に訴えました。その呼びかけに応じ上の項目で触れたように多くの国々が同調する結果となります。この頃、アフガニスタンのお隣ではアメリカと友好関係にあったイランで君主制度がイスラム革命と呼ばれる体制変革によって崩壊していました。アメリカと敵対するイランイスラム共和国が1979年に誕生しています。この地域に友好的な勢力を作りたいと望んでいたアメリカはアフガニスタンがアメリカと敵対するソビエト連邦の強い影響下に置かれることを容認できなかったようです。

 

スポンサーリンク

ソ連がアフガニスタンに侵攻した理由

 

ソ連がアフガニスタンに侵攻する1979年12月以前にアフガニスタン国内では政変が起こっていたそうです。1972年の9月、アフガニスタンでアミーンという当時首相を担当していた人物がタラキーという革命評議会議長を担当し国を仕切っていた人物を権力の座から引きずりおろし自分が革命評議会議長に就任するという出来事がありました。それまでのアフガニスタンの政権はソ連との関係が強く、ソ連との間で善隣友好条約と呼ばれる軍事的な要素も含んだ約束を結んでいました。しかしアミーンという人物が国を仕切る体制に変わってしまったことでアフガニスタンがソ連との距離を置いてアメリカとの関係をそれまでに比べて強めようとしたのだそうです。アミーン政権のやり方に不信感を持った当時のソ連政府は、アフガニスタンに侵攻しアミーン体制を倒し、ソ連と友好的な関係の政治勢力にアフガニスタンを仕切らせてアフガニスタンでのソ連の影響力を維持しようと考えました。アフガニスタン国内の権力争いによって国際的なスポーツ行事が大変な影響を受けてしまう格好となってしまいました。

 

スポンサーリンク

今回は大きなスポーツ行事に関わる話を取りあげました。オリンピックに政治的な問題が影響してしまうことはモスクワオリンピックとは別の大会でもあったようですが、日本が不参加の判断をする大会というのはこの大会の他はこれまで無かったようですし、日本だけではなく相当な数の国々が参加しなかった大会として有名でもあり、ソ連の軍事的な行動が原因となっていたということもあったので記事として取りあげてみました。モスクワオリンピックで活躍してメダルを獲得しようと頑張っていた日本人選手の方々にとっては本当に気の毒な出来事です。陸上競技で有名な瀬古さんや柔道で有名な山下さんがこの時の出来事に巻き込まれていたんですね。当時の日本政府は大平正芳という人が総理大臣を担当する政権でした。この時の政府はモスクワ大会に参加するかどうか日本オリンピック委員会内で各競技団体の代表たちが方針を決める際に、それぞれの競技団体にオリンピック不参加に賛成するよう圧力をかけたそうです。大会不参加に賛成しなければ、賛成しなかった競技団体に国から資金援助しないといったやりかたで圧力をかけたのだとか。そのような政府の対応のためか日本オリンピック委員会はモスクワオリンピックへの不参加を決定します。スポーツの行事を政治利用するような行為については批判も多いような気がしますが、世界の超大国の指導者が音頭を取ると、オリンピックと言えどもこのようなさみしい結果になってしまうようです。大抵アメリカと行動を共にしているような感じがするイギリスはこの時、意外にもモスクワ大会に参加しています。もし日本がモスクワ大会に参加していたらアメリカから何か嫌がらせをされたのでしょうかね。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

冷戦が関わってくる別の話「日本国の国連加盟が実現した理由は何だったのでしょう」はこちらです。

民主主義陣営と共産主義陣営の対立が関わってくる話「米国がGHQに占領政策を転換させようと動きます。なぜ?」はこちらです。

関連記事

ページ上部へ戻る