牛肉とオレンジの貿易自由化がなぜおこなわれたのでしょう

牛肉とオレンジはなぜ自由化されたのでしょう

 

日本は西暦1991年(平成3年)4月に牛肉とオレンジの輸入を自由化しています。これまでは一定の期間に他国から輸入する牛肉の量やオレンジの量を~トンまでといった具合に決めていました。輸入量を制限していたのです。その輸入制限枠を撤廃、取り払って時間をかけて牛肉やオレンジの輸入品にかける関税を引き下げていくという内容で日本はアメリカと約束しました。牛肉とオレンジの輸入について設けていた規制を無くして、それまでと比べて自由に輸入するようになったということで「自由化」と表現されている出来事です。日本はなぜ「自由化」、つまり牛肉とオレンジの輸入に関する規制を緩和したのでしょう。それはアメリカからの要求があったからです。日本と同様、アメリカも色々な国々と盛んに貿易をしていますが、当時アメリカと日本の間の貿易についてアメリカは非常に不満を持っていました。日本との貿易が赤字で、その赤字額が拡大していたからです。

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貿易が赤字というのはこの場合アメリカから日本に物を輸出してアメリカが儲ける額と日本からアメリカに物を輸出して日本が儲ける額を比べた場合、日本がアメリカよりも儲ける額が多くなっている状態のことを意味します。これは言い方を変えると日本は対米貿易、対アメリカ貿易が黒字だと言えます。アメリカは日本に対して儲け負けている、変な日本語で申し訳ありませんが、そのような状態でした。アメリカの対日貿易赤字はこの頃から始まったのではなく1965年頃からすでに赤字にはなっていました。しかしその額が年々大きくなってしまっていたことでアメリカ側が神経質になっていたわけです。アメリカ側としては日本にアメリカ産の物資を買ってもらって対日貿易赤字の額を少しでも減らしたいという思いでした。そのような中日本側が日本への輸入について規制を設け続けている農畜産物がありました。その中に牛肉やオレンジといった農産品があったわけです。どちらの農畜産物についてもアメリカ合衆国は世界の中で有数の生産国です。アメリカ国内でたくさん生産されている牛肉やオレンジをたくさん日本に買ってもらって対日貿易赤字額を縮小させよう。その為に日本が設定している牛肉やオレンジに関する輸入制限の枠を撤廃するよう日本政府に要求しよう。アメリカが日本に牛肉とオレンジの輸入制限撤廃、自由化を求めたことにはそのような事情がありました。

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日本としても要求を受け入れなければアメリカに輸出して利益を得ている日本の輸出企業に損害が出てしまうようなことをアメリカにされてしまうかもしれません。日本製の製品に高い関税をかけるような形で。そうなっては日本経済にとって影響が大きいので日本政府としても要求を受け入れざるを得ませんでした。日本は以前から様々な農畜産物の輸入に関して関税を下げるなど輸入自由化に取り組んでいました。高い関税をかけるなどの輸入制限を設定していた農畜産物はお米など限られた農畜産物でした。牛肉やオレンジがその中に含まれている農畜産物であったことには理由があります。果物を生産する日本国内の農家の方々はたくさんおられましたが、その農家の方々が一番多く生産されていた果物は何かというと「みかん」でした。オレンジの輸入が増えてしまうとそれに伴って国内生産みかんの消費量が減少する恐れがあります。国内の果物農家のかなりの割合の方々が関わっている作物ですから、オレンジの輸入を自由化すると国内での影響が大きい。そういう理由でそれまでオレンジの輸入については制限が設けられていました。牛肉に関してはアメリカでも当然そうでしょうが、日本にとっても非常に基本的な食材です。そのため日本国内での生産基盤を維持したいという日本政府としての配慮がありました。自由化によって国外から安い牛肉を輸入するようになれば生産にかかる費用を懸命に抑えて日本国内で牛肉を生産しても価格面で輸入品に負けてしまっていました。そうなると国内生産の牛肉は消費者からあまり買ってもらえなくなり、国内の牛肉を生産する畜産農家の方々の儲けが減り廃業する畜産農家が出てきてしまい、日本の牛肉の自給率が低下してしまう結果となります。牛肉は日本にとって欠かすことの出来ない食材なのに自給率が下がってしまうのは好ましくありません。そういった事情で牛肉についても畜産農家を保護し自給率を確保するために日本政府はそれまで輸入に関する規制をしっかり設定していました。しかしそのような日本政府による国内産業保護のための規制は1991年4月、アメリカの要求によって緩和されることとなりました。

 

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今回は1991年当時大きく取りあげられていた出来事、牛肉、オレンジの貿易自由化について取りあげました。テレビでニュースを見ているとオレンジの映像や牛の映像をたびたび見かけていたことが思い出されます。そういった映像の記憶はあるのですが、なぜ日本国内で騒ぎになったのかについては当時よくわかっていませんでした。なぜ牛肉やオレンジの輸入を自由化することが日本にとって影響の大きいことなのかは記事を作る以前もよくわからないままだったので調べてみたくこのようなテーマの記事を作った次第です。アメリカとの貿易については現在も傾向が変わらず、アメリカの対日貿易が赤字のままです。現在のアメリカ大統領が日本との貿易に関して強く日本を批判するようなニュースを最近は時々目にするような気がします。結局オレンジや牛肉の輸入自由化をしても日米間の貿易の大勢に変化は無かったということですね。今後もまた1991年当時と同じように対日貿易赤字の縮小を目論んで、アメリカ政府は日本にとって非常に大切な農産物の輸入規制を取り払うよう求めてくることに、やっぱりなってしまうんでしょうかね。そうなると日本の食料自給率ってやっぱり下がってしまうのでしょうか。そうならなければいいのですが。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

日本の食料自給率について触れている話「高度成長期に日本の食料自給率が低下した理由は何でしょう?」はこちらです。

アメリカの貿易赤字が関わってくる他の話「プラザ合意によって日本はどのような影響を受けたのでしょう」はこちらです。

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