麦秀の嘆とは?読み方や意味、由来となった話について

故事成語「麦秀の嘆」の読み方

 

「麦秀の嘆」は「ばくしゅうのたん」と読むのだそうです。「嘆」の字を「たん」と読むのは聞くことがこれまで全く無かったわけではありませんでしたが、「なげく」の読み方で使うことが個人的には圧倒的に多いような気がします。麦秀という言葉を私自身は耳にしたことがありませんでした。

 

「麦秀の嘆」の意味

 

「麦秀の嘆」は「故郷の国が亡んでしまったことをなげく」という意味になります。麦秀という言葉ですが、これは麦の穂が成長すること、伸びることを意味するのだそうです。ですから「麦秀の嘆」の文字通りの意味としては「麦が成長したことを見てなげく」ということになるでしょうか。

 

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「麦秀の嘆」の由来の話

 

故事成語「麦秀の嘆」の由来となっている話は中国の古典「史記 しき」の中に掲載されています。以下に書き下し文となっているものを私なりの言葉で現在の表現にしたものを示します。誤った所があるかと思いますがご了承ください。

 

大昔の中国大陸に殷(いん)という国があった頃、その国で政治を行っていた箕子(きし)という人がいました。この人は殷という国で王様の立場にあった紂王(ちゅうおう)さんの叔父にあたる人です。この箕子さんが新しく出来た周(しゅう)という国に朝貢するために移動している時、かつて存在し今はもうない殷の廃墟を通り過ぎました。

殷の王様がかつて使用していた宮殿のあった場所はもう壊れてしまっており稲やキビが生えていました。その光景を目にしてかつて殷という国に仕えていた箕子さんは大変心を痛めました。

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大声をあげて泣きたいと思いもしましたが、それも出来ません。涙を流して泣きたいと思えば、それは女性のような振る舞いになるのでそれも思いとどまりました。そういったことで箕子さんは麦が成長することをうたった詩を作りその詩を読みあげました。

その詩にはこう書いてありました。「麦の穂が徐々に伸びてきており、稲やキビの穂もどんどん成長し光り輝くようだ。あの悪賢い子どもは私と関係が良くなかったなぁ。」

ここで悪賢い子供と言っているのは殷の王だった紂王(ちゅうおう)のことを意味しています。殷で生活していた民の人たちはこの詩の内容を聞いて涙を流して悲しみました。

 

以上のような話が「史記」の中に載せられています。

 

今回は「麦秀の嘆」を取りあげてみました。国がなくなったらこれくらい悲しいんだよということを知ることが出来るなら意味があるのかなとも思い、今回の記事はこの故事成語にしています。自分の育った国が滅び去った悲しさを意味する言葉ですので、そうそう味わうことの無い心境なのかもしれませんが、国ではなくても自分がお世話になったり長い間かかわった組織が無くなってしまう場合には似たような感情、気持ちになるのかもしれません。世の中の大半のものは始まりがあれば終わりもあるということになるかと思いますし、仕方のない側面があるかなとは思いますけれども、でもさびしいのは確かにさびしいでしょうね。

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この亡んだ国の「殷」は最後の王様、紂王さんの時代、王様の贅沢がひどく民衆には重い税を負担させる政治が行われていたそうです。もともと能力の非常に高い王様だったようで、自信過剰だったのか賢明な家臣の忠告を受け入れませんでした。殷の国の中で高い身分だった人物の子供、周王朝で「武王ぶおう」という王さまとなる人物の勢力と戦い、紂王さんの勢力は敗れてしまいます。紂王さんの軍勢は奴隷階級の人が多い構成だったそうで士気が高くありませんでした。そういった理由で戦いに敗れたという指摘があるそうです。こうして殷という国は亡びてしまいました。トップがわけのわからない国の治め方をすることで世の中が乱れ、国が亡びるという傾向は、王様の絶大な権力によって政治が行われる当時のような場合であれば尚更はっきりと出るのかもしれません。今は民主主義の世の中ですから悪い政治をするトップは選挙によって国民が交代させることも可能ではあります。だからトップによる悪政によって国が亡びるという危険性が無いかというとそこは大昔に比べれば危険性は相当低いのかもしれませんが「無い」と決めてかかることは出来ないような気もします。油断しないほうがいいのかもしれません。第2次世界大戦の前にドイツの人たちが選んだリーダー、指導者によってドイツの人たちは結果的に大変な目に遭い、亡びはしなかったものの国が東西二つに分かれるようなことになってしまいました。想像しているよりも国が亡びるという事態は身近なものなのかもしれません。祖国の廃墟を目にして嘆くようなことだけはしたくないものです。

 

今回の記事は以上となります。最後までご覧いただき誠にありがとうございました。  <(_ _)>

※記事内容と掲載している写真に関係はございません。ご了承ください。

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